東京地検特捜部が安倍晋三前首相に任意の事情聴取を要請。「桜を見る会」の前夜祭疑惑の本丸にいよいよ特捜部が斬り込むか。GoToキャンペーンを止めない菅義偉首相が批判の矛先を安倍の「桜疑惑」に向けようとしたのか?

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安倍辞任の本当の理由

   やがて安倍は「もう嫌になった」と辞任をほのめかすようになる。体調も悪化していく中で、公選法の疑いで河井克之夫妻が逮捕される。

   さらに5月21日に全国の弁護士たちが安倍や秘書らに対して出していた告発状を、8月に入り「特捜部は密かに受理した」(文春)という。ということは、安倍の辞任が近いということを特捜部は掴んでいたのではないか。

   安倍が突然辞任したのは、「現職首相として、捜査のメスが入るという最悪の事態を切り抜け」(文春)るためだったのではないか。

   今回、特捜部の動きを読売新聞とNHKがスクープできたのは、官邸がリークしたのではないかといわれている。菅首相は特捜部の捜査にストップをかけていないし、スクープが報じられたのは、予算委員会の集中審議を控えていた2日前だった。

   コロナ感染拡大が広がっているのに、GoToキャンペーンを止めない菅への批判が高まっていた。その批判の矛先を安倍の「桜疑惑」に向けようとしたのではないか。

   文春によれば、読売の報道の数日後、安倍はこういったという。「腹が立つなぁ」。菅のほうは、持病悪化が嘘のように毎晩会合に顔を出し、「私なら冒頭解散する」などと豪語する安倍に対して、こうこぼしているそうだ。

   「いつまで権力者気取りなんだろうね」

   権勢を誇った田中角栄がロッキード事件で東京地検特捜部に逮捕されたとき、三木武夫首相は指揮権発動をしなかったばかりでなく、「田中を最後に逮捕してくれれば政治ドラマとしてはこの上なくうまくいったのだが」と不満を漏らしたと伝えられる。

   これまで権力者に這い蹲っていた人間でも、自分が権力を持てば前の権力者を排除しようとするのは政界でも産業界でも同じである。

   少なくとも、秘書の略式起訴は避けられないといわれる「桜疑惑問題」だが、安倍が全容を知りうる立場にいたことは間違いない。

   早くも"スガーリン"といわれる冷徹な菅首相だから、特捜部に「徹底的に調べろ」とGoサインを出すかもしれない。何か日本も韓国政界のようになってきたようだ。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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