菅義偉は疲労の極に達している。主な要因はコロナ対策と経済回復を同時にやろうとする菅を忖度しない尾身茂分科会会長だ。官邸スタッフは「政府の組織なのだからこっちの意向に沿って発言しろ、と。ところが尾身さんは無視して危機を訴える。総理は怒っていますが、下手に圧力をかければ学術会議の二の舞になるのでイライラが募っている」という

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現代の「二階俊博劇場」が面白い。この古狸、菅を全力で支える気など毛頭なく、菅がダメなら石破でも安倍でも誰でも担ぐというのだ。

   現代が連載している「二階俊博劇場」がなかなか面白い。このところ、最高権力者ガースーこと菅義偉首相は、疲労の極に達しているという。その主な要因は、コロナ対策と経済回復を同時にやろうとしている菅を忖度しない、尾身茂感染症対策分科会会長だそうだ。官邸のスタッフはこういう。

   「尾身氏を憎んでいるかのようなレベルです。総理にしてみれば、政府の管轄下にあるオブザーバー組織に過ぎないのだから、こっちの意向に沿って発言しろ、と。ところが尾身さんはそれを無視して危機を訴える。総理は非常に怒っていますが、下手に圧力をかければ学術会議問題の二の舞になりかねないので、怒鳴りつけるわけにもいかず、イライラが募っているのです」

   さらにその菅をイライラさせている要因が、前総理の安倍晋三の復活劇であるという。

   「安倍さんは最近、すっかり元気を取り戻して、かつての政権奪取前夜を思わせるような活発ぶりですよ。各界の知識人に自ら声をかけて会合を繰り返し、その場に後輩議員も呼んで識者と引き合わせている。食事も脂っこい中華料理をペロリと平らげるし、アルコールも普通に嗜む。絶好調と言ってもいいのでは」(ある政界関係者)

   菅は、安倍待望論が沸き上がるのは、菅不要論が広がるのと同義だと考えているようだ。その菅が頼るのは二階俊博幹事長だが、この古狸、菅を全力で支えようという気は毛頭なく、菅がダメなら石破でも、安倍でも誰でも担ぐというのである。自民党閣僚経験者はこう話す。

   「二階の論理はシンプルで、『選挙に勝てる総理総裁なら誰でもいい』ということ。9月時点では菅なら選挙に勝てると思ったから担いだが、負けそうなら即座に次に乗り換えることが前提だ。(中略)

   石破が復活するならそれでもいいし、岸田が覚醒して最前線に復帰するなら、それも構わない。誰がどう動いてどんな流れになっても、自分はうまくそこに乗る。二階はそれだけを考える。当然、安倍が復活するなら、それもまた良し」

   しかし、菅もここへきて秘策を考えているという。

   「菅総理は、『衆院選の選挙区で敗れ、2回以上連続で比例復活した議員の重複立候補は認めない』という党の規定を、今後は厳格に適用することを決めた。該当する議員は党内に25人ほどいるが、彼らは次回衆院選では、小選挙区を勝ち上がるしか道がなくなる。

   25人の中には菅シンパや二階派の議員もいる。しかし、この25人の比例復活がなくなれば、当然、比例単独で当選する新人が代わりに増える。その新人らが『菅チルドレン』となり、元の菅グループと合わせれば50人近い規模の『菅派』が誕生する。党内に基盤がないという総理の弱点が、一気に解消されることになる」(自民党ベテラン議員)

   だが、そのためには解散に打って出なくてはいけない。今の菅に、それだけの力も能力もないことは、首相就任わずかにして広く知られてしまったから、二階に「選挙の顔にあらず」と首をはねられるかもしれない。どうする、菅首相。

二階俊博幹事長
二階俊博幹事長

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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