今年(2020年)はインフルエンザの患者数が激減しているという。9月1日を含む1週目から11月までの11週間の累計患者数は、2019年は5万5496人だったが、今年はたったの171人だ。感染症専門医の水野泰孝さんも「実際病院で診療していても今年は一人も出ていないです」と話す。
なぜこんなに減っているのか、水野さんは大きく分けて二つの理由があるという。まずはマスクや手洗い、消毒の意識の高まりだ。
水野さん「マスク、手洗いは感染症対策の基本で、インフルエンザにも有効性があるといわれているので減ったと考えられます。今年の夏も夏風邪が非常に少なかったといわれていて、感染症がかなり抑えられているということです。もう一つ、院内感染の原因になる薬剤耐性菌というのがあるんですが、病院の中でアルコールの消費量が増えれば薬剤耐性菌も少なくなるという検証データが出ています。基本的な対応が感染症の対策には非常に有効といえます」
もう一つの理由は「海外からの人の移動が減った」。
水野さん「海外から持ち込まれる感染症も今年は激減していて、海外から入ってくるインフルエンザもかなり減ったことが予想されます。昨年はちょうど9月の時期にラグビーのワールドカップがあり、南半球から人が入ってきてインフルエンザの流行が早くなったということが示唆されているので、海外からの人の移動が減ったことも(インフルエンザ激減の)一因として考えられます」
それでもコロナが減らないのは「発症前のウイルス排出」
インフルエンザの流行は抑えられているのに、なぜ新型コロナウイルスは拡大しているのか。大きな違いが、インフルエンザは潜伏期間が1~2日で、すぐに発熱などの症状が出るため感染者は行動を控えるようになるが、コロナは潜伏期間が1~14日と長く、発症2日前からウイルスを排出してしまう点だ。
水野さん「インフルエンザの場合は症状が出てから他の人にうつすんです。新型コロナウイルスは症状が出る前からウイルスの量が増えてきて他の人にうつしてしまう。ここが非常に厄介なところです。私が今感染していたとしても、明後日発症するなんてのは誰もわからないですよね。私が今日食事に行って会話をすればうつしてしまうので、今さかんに言われていますが、食事をする時にマスクを外して至近距離で会話をするのは十分注意していただく。できるだけ食事が終わったらマスクをして会話を楽しむのが重要です」
インフルエンザについては、「基本的な感染対策を徹底することで大きな流行を避けられる可能性は十分にあります」(水野さん)とのことだが、予防接種を受ければより安心だろう。
石井隆広アナウンサー「一時期、インフルエンザワクチンの接種は高齢者を優先するなどありましたが、現在、希望者は医療機関で接種を受けることができます。ただ、厚生労働省によると、接種にあたってはあらかじめ医療機関に電話で予約をしてくださいということでした」