昭和38年に片岡知恵蔵主演で封切られ、13人の刺客集団と大名行列が中山道の宿場町で激突するクライマックスの殺陣シーンが、日本映画史上に残る金字塔とされた映画「十三人の刺客」――その傑作時代劇がNHK・BSプレミアムでリメイク放送される。当初は8月に放送される予定だったが、新型コロナの影響により放送が延期されていた。
幕末天保年間、播磨国明石藩江戸家老・間宮図書が、幕府の老中筆頭・土井大炊頭(里見浩太朗)の屋敷門前で割腹して果てた。藩主・松平左兵衛督斉継(渡辺大)の悪逆無道ぶりを訴えての死だった。
斉継は藩士の妻に懸想して手を出し、その夫もろともに斬り捨て、「刀が山猿の血で汚れた」と言ってのける暴君だ。殺された藩士の父親・牧野靱負(石橋蓮司)は「一夜にして倅も嫁も失った」と悲嘆に暮れるが、こんな暴虐な振る舞いは枚挙にいとまがないほどだ。
だが、冷血な暴君であっても斉継は将軍の弟であり、老中就任も内定している。幕府としては表立って処罰することはできない。そこで、土井は御目付役・島田新左衛門(中村芝翫)を呼び出し、非常手段として斉継暗殺を命じた。悠々自適の隠居を考えていた新左衛門だったが、土井に「天下万民のために引き受けてくれぬか」と頼まれ、大事決行を決意する。
丸ごと買い取った美濃国落合宿を砦に改造し、死闘が始まる
「松平斉継様を討つことと相成った」という新左衛門のもとに集ったのは、弓の名人で徒目付組頭・倉永左平太(勝野洋)、剣の達人で島田家の食客・平山九十郎(神尾佑)ら9人。これに芸妓の家に転がり込んで放蕩三昧をしていた新左衛門の甥・島田新六郎(福士誠治)と槍の名手の武州浪人・佐原平蔵(西村まさ彦)が加わり、総勢12人で江戸を出立した。「時が不足なら人も不足」という最悪の状況だ。
おまけに、極秘裡に進められていた暗殺計画を事前に察知した人物がいた。文武両道に長ける知恵者で、自らの才覚で斉継の側用人千石という身分をつかんだ鬼頭半兵衛(高橋克典)だ。半兵衛は新左衛門の剣のライバルであり、竹馬の友でもあった。
そして、間宮図書の割腹事件から一カ月余、明石藩が突如参勤交代の途についた。行列を追う新左衛門らは中山道の山中で奇襲を狙ったが、瓜二つの駕籠を2丁用意するという半兵衛の奇計に遭って失敗に終わる。
生半可な策では半兵衛の巧妙な守りを破れないと考えた新左衛門は、美濃国落合宿を丸ごと買い取って砦に改造し、斉継一行を迎え撃つという大胆な作戦に出た。多勢に無勢の不利を軽減するため、弓や槍で徐々に敵の数を減らし、迷路のような砦の奥へ奥へと誘い込んで斉継を討つ計画だ。落合宿の郷士・木賀小弥太(渡部豪太)も一員に加わり、刺客は13人となった。
いよいよ迎えた運命の朝。深い靄の中を落合宿に入った斉継一行は、塀で行く手を塞がれ、退路の橋は大音響とともに爆破された。ついに十三人の刺客の死闘の火蓋が切って落とされたのだ......。
今週末は、手に汗握る本格大型時代劇をたっぷりと楽しめるぞ。(よる9時放送)
寒山