進む研究、子宮内部に善玉菌、月経前後で異なるエネルギー源...
性差に基づく技術開発を推進しているお茶の水女子大学ヒューマンライフイノベーション研究所・佐々木成江さんは「これまでタブー視されてきた働く女性の体の悩みがフェムテックの製品やサービスが出回ることで理解が深まり、社会全体で解決していかなければと意識が高まることを期待している」と話す。
特に現代の女性に影響を与えているのが月経の回数の増加。妊娠授乳中は月経がないが、産む子どもの数が減っている現代女性の生涯の月経の回数は増えており、100年前の9~10倍の約450回と言われている。管理職になる40~50歳代では更年期の様々な症状に直面する。
産婦人科医の宋美玄さんは「月経は当たり前にあることで、健康のあかしと思われているが、月経回数が増えると子宮や卵巣に負担がかかり、その結果として子宮内膜症や不妊症、卵巣がんも増えている」と話す。
不妊治療も進化している。これまで無菌状態と考えられてきた子宮内部に5年前、米国の大学が善玉菌「ラクトバチルス」の存在を発見。受精卵の着床に影響している可能性が明らかになった。この善玉菌が少ない人にこの菌を投与すると、妊娠成功率が上がるかが研究している。これについて日本企業が検査キットの開発も進めている。
女性の体に適したトレーニングの研究をしているのが日本体育大学の須永美歌子教授。運動機能が月経周期によってどう影響を受けているのか、運動前後の血液成分の変化を調べたところ、月経周期によって体を動かすときのエネルギー源に違いがあり、月経前は脂肪、月経後は糖を主に使っていることがわかった。これにより月経前は有酸素運動、月経後は筋トレなどがより効果を生む可能性が見えてきた。須永教授の研究を練習に取り入れている女子駅伝チームでは選手の月経周期を共有し、練習量に差をつけるなどの改革を進めた結果、全日本大学女子駅伝で29年ぶりにベスト3になった。
お茶の水大学の佐々木さんは「性差という視点を忘れていないかを意識することで、ビジネスチャンスが広がっていくと思われる」と話した。
バルパス
※NHKクローズアップ現代+(2020年11月24日放送「女性の体の新常識フェムテックで社会が変わる」)