東京五輪は開催できるか?テストケースだった体操国際大会の舞台裏は想像を超えた「コロナとの闘い」だった!「五輪の扉を開ける」と覚悟の選手団、連日のPCR検査、厳しい隔離、「偽陽性」だった内村航平の「思い」は...

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内村は「どうやったら五輪ができるか、みなさんで考えてください」

   日本選手団はホテルに入る2週間前から、隔離生活を送ってきた。連日のPCR検査も行われた。内村航平選手が、いったん陽性とされた後で陰性となり「偽陽性」と診断された。最初に陽性反応が出た時点では、日本選手団に広がっていれば、日本の出場は取りやめにする、とされた。再検査の結果が出るまでの2日間、日本選手団は練習を中止せざるを得なかった。内村選手は、「もう正直、最初に陽性と言われたときは、絶対ウソだと思いましたね。ぼくが陽性と出てしまうと、これだけいろんな人に迷惑というか、影響があるんだって知れた。でも、1%か2%の可能性をひいたのはぼくなので、そこはすごく申し訳ないなって気持ちがみなさんにはありましたね」という。

   観客は2000人に絞られ、間隔をあけて座った。開会式では、内村選手が「きょうはみなさんに、声を出して応援はできないかも知れないですけれど、立ち上がって歓声をあげたいくらいの演技ができればいいなと思っています」。ナゴルニー選手は「来年のオリンピックは、どの選手にとっても人生でいちばん大切です。安全に開催できることを、この大会で世界に示したい」とあいさつした。

   調整不足の影響か、失敗も目に付いた。しかし、ナゴルニー選手は6種目すべてで乱れのない正確な技を見せた。「偽陽性」に翻弄された内村選手は、特別な思いで演技に臨んだ。「迷惑をかけた形になるので。他の選手が持っている使命感とかよりも、人一倍、百倍くらいですかね。ここで良いパフォーマンスを出せないと、そもそもオリンピックにもつながらない。演技でみんなを引っ張っていく」。鉄棒で、東京五輪のために磨いてきた大技、H難度の「ブレットシュナイダー」を決めて見せた。去年の世界選手権金メダルの記録を上回る高得点だった。

   感染者を1人も出さずに幕を閉じた今大会の閉会式で内村選手は東京五輪への思いを訴えた。「日本の国民のみなさんが、オリンピックはできないんじゃないかと、80%を超える人たちが思っているというのが、非常に残念というか、しようがないのかな、とも思うんですけれど。できないじゃなくて、どうやったらできるかをみなさんで考えて、どうにかできるように、そういう方向に考えを変えて欲しいなと、ぼくは思います」。

   五輪開催の条件として、東北医科薬科大の賀来満夫・特任教授は「世界の感染状況が安定する」「日本の医療が逼迫していない」ことをあげる。今大会は、「1競技30人」の参加だったが、東京五輪では「33競技で約1万人」が参加する。このほかにも、PCR検査を毎日できるのか、観客をどれくらい、海外からも受け入れるのか、偽陽性や陽性者が出た場合にどう対応するのか。課題は山積している。

NHKクローズアップ現代+(2020年11月17日放送 「東京五輪は開催できるか~コロナ後初の国際大会 舞台裏~」)

文・栄

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