今年1~3月にシーズン1(全10話)が放送された「アメリカの『今』を映し出す本格的法律ドラマ」(NHK公式HPより)のシーズン2(全13話)が今月8日からスタートした。
シーズン1は、大企業や白人の富裕層をクライアントに持つシカゴ最大の弁護士事務所のカリスマ女性弁護士ダイアン・ロックハートが、ドナルド・トランプ大統領の就任にショックを受け、引退して南仏プロバンスに移住する決意をするシーンから始まった。しかし、ダイアンはその直後、投資詐欺事件に引っかかって全財産を失い、移住を諦めざるを得なくなった。ダイアンは主にアフリカ系アメリカ人をクライアントに抱える法律事務所に移籍し、社会の底辺で苦悩する人たちの代理人を務めることとなった。
シーズン1の最終第10話で、その事務所の代表エイドリアン・ボーズマンが、トランプ政権下のアメリカ社会について「この国の崩壊を見たがっている者がこんなにもいるとは! 外に出れば、わけの分からないヤツらが走り回っている。実に恐ろしい時代だ」と嘆く。これが制作されたのは、トランプ政権誕生から1年ほどのころだが、今日までのトランプ時代の4年間に引き起こされたアメリカ社会の分断と混乱を予言したようなセリフだ。
大統領選さ中の放送、NHKもなかなか「あざとい?」
シーズン1は、同じ事務所に勤務する弁護士マイア・リンデルが、投資信託詐欺で起訴された父親の共犯容疑で逮捕されるシーンで幕を閉じた。父親は司法省との間で、懲役35年の刑に服するのと引き換えに娘のマイアを不起訴とする司法取引をしたが、家族を裏切って若い愛人と一緒に海外に逃亡したのだったのだ。
さて、本題のシーズン2だが、『反トランプ』を標榜するCBSテレビ制作のドラマだけに、トランプ批判は辛辣さを強めている。
シーズン2では、身に覚えのない共犯容疑で逮捕されて保釈中のマイア、マイアの代理人を務める同僚弁護士ルッカ・クイン、マイアの名付け親でもあるダイアンの3人VS司法省の攻防戦と、それにまつわる父と娘の愛憎劇が、縦軸に据えられている。
そこに、トランプ政権下で起きた新たなる社会のムーブメント、たとえば著名人のセクハラ疑惑に端を発した#Me Too運動や、ナチズムや白人至上主義などを掲げるオルタナ右翼の台頭、排外主義による人種差別、貧富の格差拡大などを巡って提起される裁判の模様が毎回リアルに、テンポよく描かれていく。
裁判官を挟んでの弁護士と検事による丁々発止の舌戦はときにシリアスに、ときにユーモアと皮肉がたっぷりで、見応え十分だ。さらに、ルッカと連邦検事局検事補コリン・モレロのロマンスや、シカゴの法曹界を恐怖のどん底に叩き落とす弁護士連続殺人事件のサスペンスなど、エンターテインメントの要素も盛りだくさんだ。
ちなみに、各回のサブタイトルの「○○○日目」は、ドラマの制作者によると「世界がトランプ大統領に拉致されてから何日が経過したかを表している」という。
今月3日にアメリカの大統領選が行われた直後から、アメリカのさらなる混迷を見透かしていたかのようにトランプ政権を批判するドラマの続編の放送を開始するとは、NHKも意外とあざとい......もとい商売上手だ。(日曜よる11時~)
寒山