<罪の声>
完成度の高さ、役者の演技力の高さで、見事な仕上がりに! 日本アカデミー賞の本命馬になること間違いなし

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   実際にあった昭和最大の未解決事件「グリコ・森永事件」をモチーフに、すでに時効となってしまった過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描く。

   原作は塩田武士のミステリー小説『罪の声』(第7回山田風太郎賞受賞)、監督は『麒麟の翼 劇場版・新参者』『映画 ビリギャル』の土井裕泰、脚本はテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『MIU404』などのヒット作が続く野木亜紀子。

   小栗旬と星野源がW主演を務めるとあって、「いかにもなエンタメ作品なんだろうなぁ」と筆者は鑑賞前はやや期待薄であった。しかし、いやいやとんでもない!本作は今年の邦画で5本の指には入る傑出した作品と言いたい。

   前半は、新聞記者で本事件の特集記事を上司から任された阿久津英士(小栗旬)と、たまたま父の遺品から事件に関わるカセットテープ(自分の子供時代の声で、事件の脅迫電話に使用されたもの)を見つけてしまった京都のテーラー店店主・曽根俊也(星野源)が、それぞれの立場から事件の生き証人を探し出し、犯人グループの犯行目的や、人間関係を紐解いていく。

   とくに、記憶にないとはいえ事件に関わってしまった曽根は、身内の誰が自分の声を録ったのかを知りたい反面、いまの幸せな家庭も守りたいという思いの間で揺れ動き、事件を追いながらも精神的に追い詰められていく。このあたりの星野による、曽根の真面目な人柄がにじみ出る演技はさすがであった。

   しかし、ここはあくまでも後半部分への伏線だ。

  • 映画『罪の声』公式サイト(https://tsuminokoe.jp/story.html)より
    映画『罪の声』公式サイト(https://tsuminokoe.jp/story.html)より
  • 映画『罪の声』公式サイト(https://tsuminokoe.jp/story.html)より

「今さら掘り返して何になる」の問いかけは、観客へも...

   阿久津と曽根がついに出会い、共同して真犯人へと迫っていく後半、曽根と同じく脅迫電話に使用するために身内から声を録音された生島望・聡一郎の姉弟の人生がつまびらかになっていく。

   父親が犯人グループの一人であったばかりに、姉弟の人生は道半ばにして不条理と暴力に支配され、語るにも忍びない「地を這うような人生」となってしまった。

   前半部分で30数年間も事件とは無関係に穏やかに生きてきた曽根の人生がきっちり描かれているだけに、その悲惨さがさらに際立つ。

   原作のストーリーの完成度の高さはもちろんなのだが、やはり役者一人ひとりの演技力の高さもこの作品をここまで見応えのあるものに仕上げているのだろう。生島一家のみならず、犯人グループや現在の生き証人たちなど、役者勢がすべてが適材適所の配置で、すばらしい演技を見せており、まさにキャスティングの妙である。

   「時効となった事件を今さら掘り返して誰に何の得があるのか」。阿久津や曽根がこの事件を追いかけ始めた当初に抱いていた問いだが、これは同時に観客の問いでもあるだろう。その答えを、観終わったあとにしっかり受け取った。

   おそらく、次の日本アカデミー賞の本命馬になる予感。とくに個人的には、現在の聡一郎役を演じた宇野祥平には助演男優賞を贈りたい。

おススメ度 ☆☆☆☆☆

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