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防衛省「馬毛島」買収に暗躍した加藤勝信官房長官や和泉洋人首相補佐官。菅政権を揺るがす大スキャンダルに発展するか。

   今週の新潮には胡散くさい話が満載である。鹿児島県沖12キロにある馬毛島をめぐるカネの話は不可解なものだ。ここを米軍空母艦載機の発着訓練用地として利用するために、昨年12月2日、菅義偉官房長官(当時)が、約160億円で買収することで地権者と合意したと発表した。

   だが昔から、この手の話には複雑な利権が絡むのは常識である。地権者は島の99%以上を所有する「タストン・エアポート」だが、そこを相手取って、新橋にある小さな事務所「リッチハーベスト」が、売買代金の3%、約5億円を仲介手数料として払えと、民事裁判を起こしているというのである。

   内容が複雑なので、簡略に記す。16年当時、「タストン」は「リッチ」から数億円の借金をしており、「リッチ」から、馬毛島の売買を一任せよといわれていて、契約が交わされたそうだ。国が馬毛島の売買交渉を始めたのは、その半年後だったから、"情報"が「リッチ」には入っていたということになる。

   その直後に「リッチ」は、当時内閣府特命担当大臣だった加藤勝信官房長官の秘書や本人と何度か面談しているという。さらなる疑惑は、17年に防衛省が出した評価額は45億円だったことである。それから売買仮契約が交わされる19年1月までに、115億円が上積みされているのだ。

   この取引には先の加藤勝信や菅の子飼いの和泉洋人首相補佐官なども登場してくる。菅政権を揺るがす大スキャンダルに発展するのだろうか。

   今一つは、日本に配備される予定だったイージス・アショアについての疑惑である。河野太郎防衛大臣(当時)が、ブースターが演習場外に落下してしまう可能性があるという理由で停止を発表した。この時採用されたのはロッキード社製だったが、この選定に疑惑があることは、停止直後からいわれていた。

   新潮は、政府や与党の限られた防衛関係者に配布された、その時点では配備計画が生きていた時の「日本企業参画検討経緯」と題された文書を入手したという。それを読み解くと、MDA(米国ミサイル防衛省)がロッキード社に便宜を与えていたのではないかという疑惑を窺わせるというのである。

   これについては、東京地検特捜部が関心を示しているというのだから、日本側にも何らかの形で"加担"した人間がいたということであろう。ロッキードというと田中角栄の事件を思い出すが、第二のロッキードになるのだろうか。

加藤勝信官房長官
加藤勝信官房長官

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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