軽度の知的障害や発達障害は、気づかれない場合が多い。就労や社会生活に苦しみ、生活支援を受けて初めて診断されるケースも。公的サポートや周囲の理解が急がれる

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見逃されているケースが多いのは30代以降世代

   なぜ長い間、障害に気付かれず、支援につながらないのか。大正大学教授で精神科医の内山登紀夫氏は「診断がつくギリギリの境界にいる場合と、抑うつ症状などの合併症もあり障害がわかりづらい場合があり、見逃されやすい」と指摘する。厚生労働省の調査では、発達障害と診断された人は全国で48万1000人いるが、年代別で見ると30代以降が急速に少なくなっている。内田教授は「発達障害は年代で差があるものではないので、30代以降の世代には見逃しがあると考えられる。公的サポートを受けていないことを意味しているのではないか」と話す。

   相談窓口として、都道府県と政令指定都市には発達障害者支援センターや精神保健福祉センターが、市町村には保健センターなどがあるので、「生きづらさがあり、困りごとを抱えている人は、まずサポートを考えるべきだと思う」と言う。

   静岡県富士市の就労支援の窓口では、相談に来た人に独自の聞き取りを行い、できることとできないことを明らかにしたうえで、できることに注目し、就労の機会を見つけていく活動を進めている。これを受けて市内の協力企業につないでいく。例えば、協力企業の介護施設では業務分解という作業を行い、介護職員の仕事を専門知識が必要なものと清掃や備品の管理などの仕事を分けて新たな業務とした長く引きこもっていた人などを10人採用して、それらの仕事を担ってもらっている。エアコン部品メーカーに紹介され、2年前から勤務している男性には発達障害があり、記憶力は抜群だが急な指示が苦手だ。工場長は発達障害の本を読みこんで自ら資料を作り、職場の同僚たちに障害の知識を広める取り組みを行っている。男性は部品名が覚えにくい組み立てラインを任されて、仲間たちと働いている。

   内山教授は「富士宮市のエアコン工場でいいなと思ったのは、得意を評価しているところ。誰にでもある苦手をみんなで補い、それぞれが能力を発揮しやすい環境を作った。多様化社会の視点で、同質化しないほうが力を発揮できると思う」と話した。

NHKクローズアップ現代+(2020年11月10日放送「なぜ今も多くの人が? 気づかれない大人の障害」)

文   バルバス
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