黒幕・杉田官房副長官の「お気に召さない人選だった?」
学術会議会長だった大西隆氏は「(戦争放棄の)憲法9条は重要テーマで、日本の大学において審査基準を設けるのはおかしなことではない」と反論する。大西氏によると、2016年から会員選出の途中段階でも1回、政府から説明を求められるようになった。省庁の幹部人事に首相官邸が事前相談・報告を求め始めた時期だ。
2年前、会員の欠員を補充しようとした当時の山極会長の耳に「候補者が内閣のお気に召さない」との噂が入ってきた。「別の人にと、どうやら言っているというのです。誰の意向が問い合わせると、杉田和博官房副長官の名を告げられた」という。杉田氏といえば、警察官僚出身で安倍内閣以来、官邸の中でも各省庁幹部人事を握る超実力者ともいわれる人物だ。
山極氏は「何度も面会を申し入れましたが、来る必要はないということでした」「私から官邸に出向くとも言いましたが、『(会わない)理由を言う必要もない』との返答ばかりでした」と話す。何も語らず門前払いの体質は、菅政権自体の体質でもあるのだろうか。結局、欠員補充はできなかった。
このころ内閣府で作成された文書には「総理大臣に会議の推薦通り任命すべき義務があるとは言えない」とある。さらに今月(2020年10月)、自民党は学術会議のあり方を検討する作業チームを立ち上げた。
6人が今回任命されなかったことについて、受け止め方をNHKが学術会議会員にアンケートしたところ、「違法行為で、学問の自由を侵害している」「首相は理由を説明するべきだ」との声が多く出た。NHK科学文化部の絹田峻記者は「学術会議はあくまで理由の説明を求める方針だ」という。