新型コロナウイルス感染をキッカケに家で食事をとることが多くなり、野菜や肉、魚などを直接注文するインターネットの生産者直販サイトの利用者が急増しているという。今年3月(2020年)には5万人だったのが、9月には22万人になり、2~8月の流通金額は前年同期の38倍だ。
武田真一キャスターは「これを支えているのは、小さな農業の担い手たちです。規模は小さくても、自然に優しい農作物を育てて、消費者に届けることで収益を確保します。あなたも、あすから農業を始めたくなるかもしれませんよ」と取り上げた。
利用者が新鮮な野菜を取りに行くのが楽しみになる
石川県能美市の西田栄喜さんは、サッカーコート半分ほどの約30アールの畑で、農薬を使わずトマト、きゅうり、オクラ、白菜など50種類以上を育てている。日本の平均耕作面積は約3ヘクタールだから10分の1だが、少量・多品種栽培なので、どれかが不作になっても他の作物ですぐカバーできる。野菜や加工品はSNSやネットサイトを通じて販売し、年間売り上げは1200万円、所得は600万円だ。「パソコンは農機具の1つ」という。
5年前に都内のデパート勤務をやめて、農業を始めた東京都青梅市の繁昌知洋と妻の美智さんは、140種類以上の野菜を栽培してネットや店頭で売る。年収は400万円。この7月から「CSA(地域支援型農業)」をスタートした。利用者は半年3万円を払い、1週間に1度、繁昌さんや仲間が作った野菜を取りに行く。農家は事前に資金がはいるので経営が安定し、利用者は新鮮な野菜を定額で購入することができる仕組みである。利用者は「野菜を取りに行くのが楽しみになります」と話す。
物を売るだけの時代から、体験を共有して付加価値を作る時代に
スマホで中小規模の農家の作物を直販するネット通販の代表取締役・秋元里奈さんは、「小さな農業は販路が壁になっていたのですが、ネットは消費者と直接つながれるところが大きいですね。作るところから楽しめるのです」
小さな農業を積極的に支援する自治体も出てきた。石川県羽咋市は新規就農の移住者のために教室を開催したり、JAが自然栽培のお米をほぼ全量買い取って販売したりしている。道の駅を開設して、野菜の販売場所を増やし、ふるさと納税の返礼品としても活用している。
あらゆる領域でのデジタルデータの活用に取り組んでいる宮田裕章さん(慶應義塾大教授)「物を売るだけの時代から、体験を共有して付加価値を作る時代になってきているのです」
武田が最後に秋元さんに言う。「これからも、私たちと生産者をつなげるようなことを広げてください」
※NHKクローズアップ現代+(2020年10月28日放送「コロナ後の豊かな暮らしとは?見直される"小さな農業"」