今週の話題は2人のオバチャンだ。まずは宮崎美子。御年61歳。彼女が篠山紀信の撮影で「40年ぶりの奇跡のビキニ姿」を公開したのである。宮崎は芸能生活40周年になる。篠山と「何か新しいことに挑戦したい」と話し合いを重ねた結果、ビキニ姿も入った「カレンダー&フォトブックセット」の発売が決まったという。
新しいことがビキニ姿というのは、あまりにもイージーな企画だと思うが、それはさておき、10月19日にAmazonで予約を開始したら、カレンダー部門で、あの映画『鬼滅の刃』を抑えて、最速で第1位になったそうだ。
この宮崎の写真は、先週の週刊現代の袋とじカラーグラビアで紹介されていた。私も見てはいたが、巻頭のカラーで浅丘ルリ子(80歳)の若い頃の写真を特集していたので、不覚にも宮崎のビキニ姿を昔のものだと勘違いして読み飛ばしていた。
改めて見て見ると、顔にはやや年輪がうす~く出てはいるが、プールサイドの立ち姿などは、40年近く前と変わらない豊満で可愛らしい。赤いドレスの胸をはだけて、官能の表情を浮かべている写真は、クイズの女王としてテレビで見る宮崎からは想像できないセクシーさである。
彼女は、名門熊本高校から熊本大学へ入った才媛である。大学3年のとき、交際していたラグビー部の福島君が撮影した彼女の写真を、週刊朝日編集部の女子大生表紙モデル公募に送り、篠山が「あの写真には敵わない」といい、合格者10人に選ばれ、1980年の週刊朝日の表紙になった。
それを見たミノルタカメラからCMの話が舞い込み、翌年には『2年B組仙八先生』(TBS系)に出演してブレイクしていく。黒澤明の『乱』、小泉堯史の『雨あがる』などに出て、女優としても花開いていった。頭の良さで、クイズ番組でも活躍する。彼女の芸能界入りのきっかけをつくった福島君とは結婚しなかったが、彼は熊本大医学部を卒業後、医系技官として旧厚生省に入った。
その福島靖正が、8月に厚生労働省のナンバー2に就任し、感染症対策のプロとして活躍しているというのである。なかなかいい話ではないか。
梶芽衣子が久々に映画『罪の声』に出る。彼女は「徳義」という言葉を使う。人として守るべき道徳上の義務の意で、梶らしい筋目を通す生き方に似合う。
さて、こちらは御年73歳である。女優・梶芽衣子を知っているのは団塊世代から少し下までだろうか。映画『野良猫ロック』『女囚さそり』の梶は、1970年代という時代を体全体で表現していた。クエンティン・タランティーノ監督は、梶が主演した『修羅雪姫』が好きで、『キル・ビル』はこの映画のリメイクだったことを公言している。
私は渡哲也と共演した『やくざの墓場くちなしの花』の梶が好きだ。タイトルの横に大きく彼女の顔がアップで載っている。当時のままとはいわないが、ややシワが増え、往時のような世の中の不条理をにらみつける眼光は和らいだが、美形であることに変わりはない。その彼女が、久々に映画『罪の声』(10月30日公開)に出演するそうだ。
先日亡くなった渡哲也とは同期で、撮影が終わると「終わったの?」、渡が「はい、終わりました」。「じゃあ、帰ろう。一緒に」と、駅まで歩いて帰った思い出を語っている。渡が入院したときには、アイスクリームを持って見舞いに行ったという。渡の人柄か、2人は恋仲だったのだろうか。
彼女は「徳義」という言葉を使っている。人として守るべき道徳上の義務という意だが、ずいぶん古めかしいが、梶らしい筋目を通す生き方に似合う。久しぶりに梶に会いに映画館に行こうと思う。
菅義偉の所信表明の評判が悪い。サン毎は、麻生太郎が国会閉会後に菅を辞任させ、新たな顔を立てて選挙に臨むこともあり得るという。
ところで、菅義偉首相の所信表明の評判が悪い。なぜなら菅のいうことには裏があるからだ。デジタル化を推進するという裏には、マイナンバーカードを普及させたいという思惑がある。2050年までには温室効果ガス排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会を実現するという裏には、原発再稼働どころか、新たに原発をつくると意欲を見せた。
就任早々、携帯電話料金値下げや不妊治療の保険適用など矢継ぎ早に打ち出してはいるが、その羅列した中に菅がやりたい"本音"を埋め込んでいるのである。しかし、サンデー毎日で自民党関係者がこう語る。
「国を背負うは覚悟がない男が、不相応の地位を手にして戸惑っている。怖いから早く実績を手に入れたい。(中略)だが、メディアの前や国会で説明することは先送りにした。臨時国会を乗り切れなければ、菅政権自体が危うくなる」
自民党の中では、菅の答弁力のなさに危機感を抱いている人間が多くいるようだ。さらに、地元の福岡で二階派の武田良太と犬猿の中だという麻生太郎財務相が、武田を総務相に横滑りさせた菅に怒り心頭で、「通常国会開催中か、閉会後に菅首相を辞任させ、新たな顔を立てて選挙に臨むこともあり得る」(サン毎)というのである。何はともあれ、この臨時国会の菅の答弁次第で、この政権が短命に終わるかどうかはっきりしそうだ。
新潮が報じる菅のタニマチの公有地を払い下げ問題はスジが悪い。雪深い秋田から出てきて花のお江戸でのし上がるために、どんな人間でも利用し、また利用されてきたのか。
今週の新潮が、菅の昔からのタニマチが、公有地を格安で払い下げてもらっていた、「第二の森友学園問題」ともいうべき疑惑があると報じている。読んでみると、なるほど、これはスジが悪いと思わざるを得ない。
横浜市の保土ヶ谷区の北東、横浜国立大学の近くに位置する住宅地に、3000平方メートルほどの、かつて県有地だった土地がある。そこが5年前に「保育所や学生寮の設置」を条件に、「(有)成光舎」(河本善鎬代表)にかなり値引きされて売却されているのである。神奈川県は一般競争入札であるにも関わらず、先方の申し入れを受け、随意契約にするためのアドバイスをし、書き方まで指南してやるのだ。
だが、この「成光舎」の主な業務はパチンコホールの経営やバー、キャバレーの経営などで、これまで福祉関係の業務経験など皆無だった。だが、県側はそうした調査もなく売却を決めてしまうのである。それも当初の鑑定価格より7000万円も値引きして。
新潮によれば、最大のミステリーはここからだという。2015年1月に、売却から10年以内に保育所や学生寮用地として使用しなければいけないという契約を結ぶが、売却が完了して2か月後に、河本代表は、この土地を売却しようとしていることが発覚するのである。しかも、ここは売却を受けた当日に、関連会社の「SJ」に既に売却していたことまで判明したのだ。
それなのに県側は、「保育園建設は困難」だと理解を示し、用途指定を解除してしまう。「成光舎」は2016年8月に、この土地を大手住宅メーカーに売却するのである。新潮によれば、この売買で2億円近く「成光舎」に入ったのではないかと見ている。
県有地をめぐっての不可解な土地取引はなぜ行われたのか。それを解くカギは、河本代表が古くから菅首相のタニマチだからだというのだ。菅が初当選した1996年に、ここは菅の関係政治管理団体に献金している。また、2007年、菅は所有する横浜市内のビルに事務所を置いていたが、多額の家賃を計上していた「事務所費問題」が起き、そのビルを売却したのだが、それを買ったのも「成光舎」だった。
2人の親密関係は有名だというが、今度の疑惑の取引の中でも、河本は2度、菅の名前を出していたという。県側と揉めていた2014年1月21日に「対応によっては、知事、副知事、菅官房長官へ話しに行く」、2月25日には「納得がいかなければ、知事、副知事にも、官房長官にも行きますから」。これは県の内部文書から引いたと新潮は書いている。この後、神風が吹いたのだろう。
菅は、何度も何度も雪深い秋田から出てきて苦労した話を繰り返す。花のお江戸でのし上がるためには、どんな人間でも利用し、利用されてきたのであろう。ナンバー2でいれば、これまでの危うい人間関係をほじくられることはなかっただろうが、首相ともなればこれからも徹底的に暴かれることになるだろう。
それに「イラ菅(すが)」といわれる短気な首相がどこまで耐えられるか。失言で墓穴を掘るのではないか。早くも菅政権は正念場を迎えようとしているようだ。
ポストによると、菅は情報番組でコメンテーターが何を喋るかチェックしていた。星浩と後藤謙次の回数が多かった。権力の監視役が監視されていたのだ。
ポストは、菅をトップとする内閣官房が、テレビのワイドショーや夜のニュース番組のコメンテーターたちが、どのようなことをしゃべったのかを記録した文書を入手したと報じている。菅が官房長官のときで、今年(2020年)1月までの10か月間、255枚にもなる膨大なものである。菅は、以前、文藝春秋から出した『政治家の覚悟』という本の中で、「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と書いて、公文書管理の重要性を認めていたのに、改訂版では、そこの部分を削除していたことがわかり、批判を浴びている。
菅という男はタイトルと違って、「覚悟のない政治家」である。安倍晋三前首相と同じで、後で問題になりそうな文書や記録は、簡単に破棄するのに、テレビのコメンテーターたちの発言は逐一チェックして、問題発言があれば容赦なくテレビ局へ怒鳴り込もうというのだから、やり方が陰険を通り越して、汚過ぎる。
発言をチェックされている数が多いのは、『NEWS23』の元朝日新聞の星浩と『報道ステーション』の元共同通信の後藤謙次だという。この文書は、都内に住む男性が情報公開請求で手に入れたものだというが、すんなり出したのは、「文書の存在を示すこと自体が、メディアに対する牽制になっているのではないか」(政治アナリストの伊藤惇夫)。私もそう思う。
ポストがいうように、「権力を監視するはずのメディアが、権力によって監視されるという異様な時代がやってきた」のである。
米司法省がグーグルを反トラスト法違反で提訴した。昔から「タダより高いものはない」という。GAFAの傍若無人な個人情報収集の怖さに気付くべきだ。
さて、10月20日に、アメリカ司法省が、ネット検索と広告の分野で公正な競争を妨げていると、ITの巨人グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。ついに、国とGAFAが決着をつける時が来たようだ。だが、ニューズウイーク日本版は、この提訴はまだ序の口だといっている。
様々な企業や学校、保険会社などが、ほぼ規制ゼロのオンライン・プラットフォームから、多くの個人情報を共有している今、「私たちは誰が個人情報にアクセスして、それをどのように利用するのかを問う必要がある」からだ。次に誰が大統領になっても、「議会と協力して、意味のあるネット規正法を成立させなければならない」(ニューズウイーク日本版)
そのためにどうするのか。「ヨーロッパの一般データ保護規則(GDPR)のような枠組みが必要だ。GDPRは、消費者が個人データを効果的に管理できるようにして、EU全域で国際企業に対する規制環境を単純化したものだ」(同)
つまり、消費者が自分のデータを自分で管理し、本人の意思でいつでも拒否できるようにすることだという。巨大IT企業のほとんどが透明性を欠いている。ユーザーのどのような情報を収集しているのか、本人に伝えることはない。
それは、IT企業の経営者たちが、「自社のサービスはユーザーにとって『無料』だと繰り返し間違った主張をしている」(同)からで、それがいかに間違っているかを明らかにし、ネット上で消費者を保護する有意義な法案を可決するために、「党派を超えて取り組むべきだ」(同)としている。
昔から「タダより高いものはない」というではないか。個人情報にあまり重きを置かないこの国でも、GAFAの傍若無人な個人情報の収集や利用に歯止めをかける時が近々必ず来るはずである。(文中敬称略)