ポストによると、菅は情報番組でコメンテーターが何を喋るかチェックしていた。星浩と後藤謙次の回数が多かった。権力の監視役が監視されていたのだ。
ポストは、菅をトップとする内閣官房が、テレビのワイドショーや夜のニュース番組のコメンテーターたちが、どのようなことをしゃべったのかを記録した文書を入手したと報じている。菅が官房長官のときで、今年(2020年)1月までの10か月間、255枚にもなる膨大なものである。菅は、以前、文藝春秋から出した『政治家の覚悟』という本の中で、「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と書いて、公文書管理の重要性を認めていたのに、改訂版では、そこの部分を削除していたことがわかり、批判を浴びている。
菅という男はタイトルと違って、「覚悟のない政治家」である。安倍晋三前首相と同じで、後で問題になりそうな文書や記録は、簡単に破棄するのに、テレビのコメンテーターたちの発言は逐一チェックして、問題発言があれば容赦なくテレビ局へ怒鳴り込もうというのだから、やり方が陰険を通り越して、汚過ぎる。
発言をチェックされている数が多いのは、『NEWS23』の元朝日新聞の星浩と『報道ステーション』の元共同通信の後藤謙次だという。この文書は、都内に住む男性が情報公開請求で手に入れたものだというが、すんなり出したのは、「文書の存在を示すこと自体が、メディアに対する牽制になっているのではないか」(政治アナリストの伊藤惇夫)。私もそう思う。
ポストがいうように、「権力を監視するはずのメディアが、権力によって監視されるという異様な時代がやってきた」のである。