菅義偉首相が自民党の野党時代、2012年に執筆した著書『政治家の覚悟』の改訂版の売れ行きが好調だ。しかし改訂版では民主党政権が東日本大震災の議事録の大半を残していなかったことに対し、厳しく批判した部分がごっそり削られ、問題視されている。
削除されたのは2012年版の第3章と第4章。そこには「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」などと書かれた部分が含まれている。
菅首相自身が官房長官時代、森友問題の決裁文書の改ざんや「桜を見る会」の招待者名簿の廃棄などをめぐり、安倍政府の公文書に関わる問題で矢面に立って説明してきただけに、新たな火種を招きそうだ。
出版元の文藝春秋は「編集部の判断で割愛した」
立憲民主党の枝野幸男代表は「菅新政権がしっかりと記録を残す意志を持っていないということを、わざわざこの部分を外したということによってお示しになっているとしか思えません」と苦言を呈した。また、同党の蓮舫議員も「公文書管理を強く主張していたのに。削除。すごい『覚悟』だ」とツイートで皮肉った。
改訂版を出版した文藝春秋社の編集部は、2つの章を削除した理由について「総ページ数など全体のバランスを考えた上で、編集部の判断で割愛しました。当該箇所が意図的に削除されたかのような報道も散見されますが、そうした意図は全くありません」と回答している。
月曜コメンテーターの橋下徹は「総理がチェックしないなんて出版の常識ではあり得ない。元共同通信社の柿崎明二さんが今、首相補佐官をしていますが、何でひと言言ってあげなかったのかな。削ったら絶対こうやって騒がれるだけで1つも良いことが起こらないのだから。柿崎さんはそういう役割でしょう」
キャスターの立川志らく「出版社は、割愛せずに黒塗りにすればよかったのにね」