携帯電話料金が家計を圧迫していることは間違いない。私は年甲斐もなく、iPhoneとiPadを持ち、オフィスと自宅にPCを置いている。オフィスはNTTのフレッツ光、自宅ではソフトバンクのWi-Fiを入れている。これにAmazonプライムとNetflixの支払いもある。カミさんは格安スマホに変えたが、それでも年金暮らしには毎月のIT関連の支払いはかなりの重荷である。
菅首相が、携帯電話料金の値下げを指示したのは歓迎だが、どうせやるなら20GBをフランスやイギリスのように月額2000円台にしてもらいたいものだ。機を見るに敏なソフトバンクの孫社長が、20~30GBを5000円以下にするといち早くいい出したが、その程度では焼け石に水だ。
その菅首相がNHKの受信料値下げにも積極的だと、文春が報じている。文春によれば、受信料未払いの契約者には訴訟も辞さないという強硬な姿勢が功を奏して、昨年度は支払い率が83%と過去最高になり、受信料収入は約7100億円にもなったという。ちなみに民放第1位のフジテレビは約6300億円だそうだ。
令和元年度末で1280億円の繰越金を計上しているという。文春は、NHKは民間企業ではない特殊法人なのだから収支均衡が求められる、つまり、利益など残さずトントンにせよというのだ。菅は、「子会社やチャンネル数の整理などNHKのコストカットを実現させた上で、本丸の受信料値下げに斬り込んでいく」(首相周辺)つもりだそうだ。
文春に、前田会長は「報道機関に手を突っ込むのは普通じゃないよ。戦前じゃないのだから」と語った。その言やよし。
NHKの受信料徴収の苛烈さは、私も身に染みているし、受診料が安くなることに異存はない。だが、菅がNHKへ介入する意図は、もっと危険なところにあることを見逃してはいけない。菅は、「新聞・テレビから雑誌まで様々な記者と付き合う反面、メディアをコントロールできると考えているフシがあります」(政治部デスク)。そう、菅の本音は、NHKの国営放送化にあるはずだ。
菅が官房長官のとき、会見での東京新聞の望月衣塑子記者への質問妨害、NHK『クローズアップ現代』のキャスターだった国谷裕子を降板に追い込んだことなど、菅が言論を規制してきた例は枚挙に暇がない。
第二次安倍政権から安倍と菅が取り組んできたのがNHKの国営化である。『総理の影 菅義偉の正体』(小学館eBooks)で森功(もり・いさお)は、「菅の悲願は、受信料の義務化を通じた事実上の国営放送化である」と指摘している。
第一次安倍政権時代に菅は、受信料を2割下げろ、できなければ受信料を義務化する、国営放送にするとNHKに迫ったそうだ。2人の思惑は思わぬところで叶った。コロナ感染で、事実上、NHKは国のいい分をそのまま垂れ流す大本営発表メディアになったのである。
タナボタで首相になった菅は、この機に乗じてNHK国営化を、受信料値下げを隠れ蓑にしてやろうとしていると、私は見ている。だが現在の前田晃伸会長は、みずほフィナンシャルグループ出身で、安倍を囲む財界人の一人だったが、「曲がったことが大嫌いな信念の人」(みずほ関係者)だそうだ。
10月5日に菅と面会したそうだが、菅から受信料値下げはいい出さなかったという。前田は文春に対して、
「国がやっている放送局じゃないのだから、手はつけられない、どうにもならない。携帯会社は国営じゃないけど、報道機関に手を突っ込むのは普通じゃないよ。戦前じゃないのだから」
その言やよしだが、菅は経営委員をすげ替えて前田を追い出し、以前の籾井勝人のような政権ベッタリの人間を据えることができるのである。菅がトップにいる間は、厳重要注意であるこというまでもない。