コロナ禍で老舗の「100年企業」が危機に直面する。山形の漬物店はコロナ禍で廃業。地域文化や歴史も失われることになる。「大量廃業時代」にどう立ち向かっていくのか?

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   新型コロナウイルスの影響による業績の悪化が打撃となり、休業や廃業に至る企業が相次ぐ中、地域の経済や文化を支えてきた老舗の「100年企業」までもが危機に瀕している。日本は世界で一番「100年企業」が多く、全国で2万5321社ある。"日本の宝"ともいえる「100年企業」を守るために今、何が必要なのか。

   山形市にある創業135年の漬物店「丸八やたら漬け」はこれまでの歴史の中で、食生活の多様化などで売り上げが低迷するが、歴史ある蔵を観光客向けのレストランに改装し、時代の変化に対応してきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、2~4月の予約4500人分がゼロになった。需要の回復も見通せない中の4月、赤字が拡大する前に廃業を決断した。この決断に、地元は地域の賑わいまでが失われるのではないかと懸念している。2年に1度開催される「山形国際ドキュメンタリー映画祭」には国内外から延べ2万人が訪れるが、開催期間中に観客と映画関係者が交流できるための拠点として、漬物店は深夜まで蔵を開放していた。その蔵もまもなく取り壊されてしまうためだ。

  • コロナ禍で老舗が廃業に(『NHKクローズアップ現代+』公式サイトより)
    コロナ禍で老舗が廃業に(『NHKクローズアップ現代+』公式サイトより)
  • コロナ禍で老舗が廃業に(『NHKクローズアップ現代+』公式サイトより)

廃業・解散企業は昨年比24%増加、失われる地域経済と伝統の技

   東京商工リサーチによると、今年全国で休業や廃業、解散をした企業は昨年比24%増の3万5816件。このペースが続くと、年間で5万3000件を超え、過去最多になると見込まれており、大量廃業時代の到来が危惧されている。

   三重県鳥羽市の観光ホテル「錦浦館」は鳥羽の宿泊施設の草分けとして地元の観光業を引っ張ってきた。しかし、コロナ禍で減少した観光客は戻らず、苦しい資金繰りが続いている。

   経営相談をしてきた弁護士は「いずれは厳しい選択が必要になる」と伝えられた。しかし、簡単に事業を畳むわけにはいかないと経営者は考えている。魚や野菜の業者、タオルやシーツの業者など、10社余りある取引先はほぼ地元企業で、事業をやめれば地域経済にまで打撃を与えてしまうからだ。

   日本の伝統文化が途絶えることも懸念されている。創業135年の三味線づくり大手「東京和楽器」(東京・八王子)は13人の職人を従業員として抱え、国内シェアの5割以上を生産している。しかし、新型ウイルスの影響で全国の舞台や祭りが相次いで中止になり、新規の注文も修理の依頼も減少。売り上げは3分の1以下になり、毎月の赤字は100万円超える。真剣に廃業を考えていた。だが、廃業すれば脈々と受け継いできた職人の技も失われてしまう。経営者は「やめたら三味線業界はどうなるのか。責任を感じている」と悩みを隠さない。

   日本の伝統産業を次世代に受け継ぐため、さまざまな独自商品を開発してきた「和える」の矢島里佳代表は全国の伝統産業の担い手にコロナ禍の影響についてアンケートを取った。367件の回答中の4割が年末までに廃業の可能性があると答えたという。矢島さんは「100年企業が廃業すれば、未来の経済的損失につながるだけでなく、地域の文化や歴史が失われてしまうおそれがある」と話す。

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