SNSを中心に、新しいハラスメント「ロジハラ」が注目されている。ロジハラとはロジカル・ハラスメントの略で、「論理的な嫌がらせ」のこと。正論を振りかざして相手を追い詰め、不快な気持ちにさせる行為だ。
ハラスメント問題に詳しい、産業カウンセラーの大野萌子さんは、「コロナ禍でロジハラの相談は増えている」と話す。「テレワークやメールのやり取りで、簡潔に伝えようとするほど、命令口調になってしまうことがある。正論を言われると自分が悪いと思いがちです。そうすると他人にも相談できず、心理的に追い詰められてしまい、うつ状態になってしまう人もいます」と言うのだ。
反論しても倍以上の理屈が返ってくる。それはモラハラでは?
「家庭でもロジハラは起こっている」と、グッとラックは1つのケースを紹介した。2人の子供を持つ30代の専業主婦は「旦那から『帰るよ』と連絡があるだけで手が震えて動悸がしてくる。私はダメな人間なんだと考えてしまう」と話す。その理由は普段は優しい夫が「ロジハラ夫」に豹変する瞬間があるからだ。
例えば、「今から帰るから部屋をきれいにしておいて」と仕事終わりの夫からメールがある。家事に追われて指示通り片付けまで手が回らないと夫は豹変。「なんで汚いんだ」「散らかった家に帰りたくないから連絡したんだよ?」などと責められる。「また遊ぶから、子どもが寝た後に片付けようと思って」と女性が言うと、「今はテレビ観ていて遊んでないじゃん」「ほかの専業主婦はみんなできていることだよ」と倍以上の「正論」が返ってくる。しかしこれは、そもそも正論でもないので、ロジハラというよりモラハラではないか。
乙武洋匡氏は「ロジハラ」自体を疑問視
一方、作家の乙武洋匡氏は「ロジハラ」の存在自体を疑問視する。「相手に論理的に詰められて、辛い思いをされている方々がいるのは事実だと思います。ただ、この国は空気が重視されがちで、科学的事実やデータに基づいてなくても、感情的に流されがちです。でも、データに基づいた意見を言える人の存在はめちゃくちゃ重要ですし、そういう人の意見にしっかり耳を傾けられる社会であってほしい」と乙武さん。
キャスターの立川志らく「なんでもかんでも『ハラ』を付けりゃあいいって話じゃない。確かに、子どものおもちゃを片付けろっていう亭主の話はひどいと思いますよ。だけど仕事では当たり前だよ」
髙橋知典(弁護士)「法律的に解説すると、ロジハラは違法行為にはならず、この言葉自体いりません。『正論を振りかざしてはいけない』ということになると会社が回らなくなりますから。ただ、パワハラは別です」