「竜の道 二つの顔の復讐者」で冷酷なアウトローを演じた玉木宏が、今度は、足を洗って『専業主夫』となった伝説の極道役を、いかにも気持ちよさそうに演じている。この秋一番の明るく楽しいコメディードラマだ。
『最凶の極道』と言われ、たった一人で敵の組に乗り込んで一晩で壊滅させたという伝説を持つ『不死身の龍』こと黒田龍(玉木宏)は、バツイチのデザイナー・美久(川口春奈)との結婚を機に極道の世界から足を洗い、美久の娘の向日葵(白鳥玉季)と3人で平穏に暮らそうとするのだが......。
毎回、ヤクザの抗争や婦人会同士のイザコザなどにドタバタと巻き込まれるものの、最後に元極道流のやり方でキッチリと落とし前をつけ、町の平和を守る。決めゼリフの「専業主夫を舐めんなよ!」を聞いて、視聴者はスカッとするという寸法だ。
あちこちに笑いの「地雷」、ブワァーと吹き出してしまう恐れあり
左の額から頬にかけて大きな傷があり、ちょび髭を生やしたコワモテの玉木が、大真面目にエアロビクスやヨガなどに取り組むギャップがおかしい。家の中でも黄色のサングラスをかけて炊事、洗濯、掃除などを完璧にこなすシーンでは、実際の家事に役立つワンポイントアドバイスがさりげなく盛り込まれる。
かつて龍が所属し、近ごろ解散した「天雀会」の頼りない元会長・江口菊次郎役の竹中直人と、高価な着物姿でスーパーのパートとして働く妖艶な妻・江口雲雀役の稲森いずみの掛け合いも、まるで上方の夫婦漫才を観ているようなテンポのよさだ。竹中の芸達者ぶりが余すところなく発揮され、楽しめる。
さらに、龍を兄貴と慕う元舎弟・雅(志尊淳)を狂言回しに、かつて『剛拳の虎』と呼ばれた武闘派極道で現在はワゴンの移動クレープ屋・白川虎二郎(滝藤賢一)らが龍に絡み、笑いを盛り上げる。
玉木ばかりでなく、出演者全員がそれぞれの役をのびのびと楽しそうに演じているのも、観ていて気持ちがいい。
ただし、油断は禁物。どこに笑いの『地雷』が仕掛けてあるか分からない。気を許して焼酎の水割りやダイエット茶など飲んでいると、思わずブハァーと派手に吹き出してしまう恐れアリ。ご注意を。(毎週日曜よる10時30分~)
寒山