菅義偉内閣が目指すものがわかった。「恐怖政治」「警察国家」だ。日本学術会議6人の任命拒否に続き、中曽根元首相の合同葬儀で国立大学や都道府県教委に弔旗の掲揚と葬儀中の黙祷を求めた。時代錯誤も甚だしい。中曽根の「品位」さえ傷つけることになる

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学術会議人事を取りまとめた杉田和博官房副長官は、任命にあたり思想信条の身体検査をしていたようだ。まるで戦前の公安警察だ

   文春によれば、菅は官房長官時代から学術会議の在り方に疑問を抱いていて、2018年9月の補充人事に難色を示したそうだ。それが今回も拒否された中にいた宇野重規東大教授で、2014年の安全保障関連法案などに反対する会などに名を連ね、官邸の心証が悪化していたという。

   今回の学術会議の人事を取りまとめていたのが、公安・警備部門が長い警察官僚出身の杉田和博官房副長官だったため、「任命にあたり、思想信条的な"身体検査"をしていたようです」(官邸関係者)。まるで戦前の公安警察である。

   こうした警察国家を目論む輩の下に、テレビに出てフェイク情報を垂れ流す"トンデモ"ジャーナリストたちが、菅の周りにへばり付いているのである。典型はフジテレビの平井文夫上席解説委員なる人物だ。フジの『バイキングMORE』に出て、「この(学術会議の)人たち、6年ここで働いたら、そのあと(日本)学士院ってところに行って、年間250万円の年金もらえるんですよ、死ぬまで。みなさんの税金から、だいたい。そういうルールになっている」と発言したのだ。

   だが、この平井のいっていることはほとんどがウソだったのである。学術会議の会員全てが日本学士院の会員になれるわけではなく、現在、130人のうち学術会議出身者は30数人だそうだ。この悪質なフェイクを、フジの上席解説委員がテレビという公器を使って垂れ流したのである。フジは即刻この人間を首にするべきだ。

   張本人である菅首相は、10月26日から始まる臨時国会で追及されるのを恐れ、帝国ホテルの部屋に秘書官たちと籠って、答弁のお勉強をしているそうだ。今回の人事介入には、各方面から批判があるが、どれも私にはピンと来なかった。学問の自由がそれほど大事なら、国を訴えて、法廷で堂々と違憲性を争えばいい。

安倍首相の会見中に倒れた杉田和博官房副長官(2012年撮影)
安倍首相の会見中に倒れた杉田和博官房副長官(2012年撮影)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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