昨年4月、運転する乗用車を暴走させて通行人の母子を死亡させ、9人に重軽傷を負わせた「池袋暴走事件」の旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が8日(2020年10月)東京地裁で行われた。
飯塚被告が「アクセルペダルを踏み続けたことはない。車に異常があった」として無罪を主張したことが、8日と9日の各テレビ局の情報番組で取り上げられたが、各番組ともコメンテーターたちの怒りと疑問の声があふれた。
八代英輝弁護士「検察は『危険運転致死傷』で起訴すべきだった」
TBS系「ひるおび!」では落語家・立川志らくがバッサリ切った。
「この人の態度が普通だったら...。未来ある小さな子どもを死なせた、自分のせいで。淡々と車のせいだと主張できるわけがないし、普通、泣き崩れるでしょ、本当にすいません、私はどんな罪になってもいいんですと。裁判だから無罪を主張するのはいいけど、どうやったら人生のほとんどを失ってしまったお父さんの気持ちを和らげてあげるかを考えたらいいのに、自分の主張ばっかり。だから謝っても口先だけにしか聞こえてこない」
同じく、八代英輝弁護士は起訴した検察が甘すぎるのではと、法律面の問題点を指摘した。
「なんでこれが『危険運転致死傷』で問題にできないのが、今のひとつの問題だと思います。検察がいわゆる縮小認定という形で『(自動車運転処罰法違反の)過失致死傷』(で起訴しているのは)、最終的に裁判所に認定されるのは構わないと思いますが、せっかく危険な運転から歩行者を守りたいという危険運転致死傷が市民の努力によって制定されたわけですから、まずこれを問うべきだと思います。これが問えなかった時点で検察に対してはどうなのかなと感じるところがある」
玉川徹「官僚は間違いを認めてはいけないという人生観の人」
テレビ朝日系「大下容子ワイド!スクランブル」では、脳科学者・中野信子氏は飯塚被告のいかにも元官僚的な態度をこう指摘した。
「飯塚被告、言葉はすごく丁寧なんですけれど、残念に思うのはすごく他責的に聞こえるんです。責任をこうやって他の人に求める姿勢が出世することに重要だったのかな?って考えてしまいます。そういう人しか生き残らない社会に日本はなったのかってすごく絶望するような気持ちになるんです」
テレビ朝日系「羽鳥モーニングショー」では、コメンテーターの3人が「元高級官僚の驕り」だと追及した。
吉永みち子(ノンフィクション作家)はこう皮肉った。「高級官僚さんでいらっしゃって、自ら間違いを認めない人生をずっと送ってこられたからなのか、ご高齢で本当に自分に過失がないと思い込んでしまっているのか。裁判では、ここが難しいところになるのかなあとも思いますけどねえ」
玉川徹(テレビ朝日コメンテーター)もこう疑問を投げかけた。「無謬性と言いますか、官僚は間違えない、間違いを認めてはいけないということが、この人は自分の人生に染みついてしまっているのかなあ」
長嶋一茂(スポーツプロデューサー)は妻と娘を失った松永拓也さんの無念に思いを寄せた。「(有罪で)ご遺族の思いは晴れるかといったら、非常に難しいですよね。この裁判でご遺族の気持ちが少しでも救われてほしいというのが、僕はいちばんだな」
梅沢富美男「同じ昭和に生まれた人間として恥ずかしい」
激しい怒りをぶつけるコメントも多かった。フジテレビ系「バイキング」では、お笑いタレント・松嶋尚美がこうぶちまけた。
「お父さん(遺族の松永拓也さん)が娘さんのご遺体を見に行こうとしたら、看護師さんに止められたという話を聞いたら、こんな一瞬でね...。たとえ踏み間違えじゃなくて、車の異常だったとしてもよ、飯塚被告が取り乱すほどの反省をしていない。それも腹立つし。いろんな面でこの事件は震えがくるぐらい腹が立つ」
日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」では、俳優・梅沢富美男が激怒した。
「裁判のことでこんなこと言うのは何ですけど、無罪を主張するって...無罪って言葉をよく言えたなっ!いい年して、当時87じゃないか。アクセルとブレーキ間違えたって自分で言っているんですから、どんな状況になろうと大変なことをしたって気持ちがないんですか?同じ昭和に生まれた人間として恥ずかしい。何人もの人をケガさせて、2人も殺している。逆の立場で自分のセガレも孫もいると思いますよ。その人たちが死んだ時に向こうが無罪を主張して、自分が証言台にたって、あの人を無罪にしてやって下さいって言いますか?俺はこれが言いたくて1日、ウズウズしてたんですよ、悔しくて、悔しくて。涙も出るし」(テレビウォッチ編集部)