大林監督「思いが入って作った映画は古びないジャーナリズムだ」
塚本晋也監督(60)は、自ら映画館に営業をかけ、5年前に公開した『野火』(大岡昇平原作)の上映を今年夏も続けた。戦場の極限状況を、戦争を知らない世代に追体験させる映画で、制作当時は自民党の強行採決で衆院を通過した安保法制の議論がわいていた。公開後、大林監督から「やむにやまれぬ気持ちでつくった映画は、思いが入っていれば古びないジャーナリズムだ」と声をかけられた。全国30の映画館で上映できた。それで「伝える責任がより重くなったのを意識します」と語る。
『のぼうの城』(和田竜原作)で28億円の興行収入を上げた犬童一心監督(60)は、コロナで収入が10分の1に減った。なぜ大林監督が4人の後輩監督に遺言を残したのかを考え続けてきた。「大林さんからすると、4人は仲間なのだ。純粋に映画の可能性という感じにまでいけるのか、みたいな」。犬童氏はいま、狂言のドキュメンタリーに取り組む。室町時代に生まれて以来650年間、戦争や疫病にあっても途切れずに続いてきた狂言に混迷の時代を生きるヒントを探ろうとしている。
大林監督がNHKカメラの前で語った最後の言葉はこうだ。「若い人たちは未来を生きているんだ。変えてみせようよ。人間である俺たちはそれができるってことだよ」
※NHKクローズアップ現代+(2020年10月08日放送「大林宣彦監督の遺言」)
文・あっちゃん