横浜市の金井晃さん(53歳)はPCR検査で陽性となり、同居している父親が濃厚接触者ということで、週5日のデイサービスに通えなくなってしまった。預かってもらえるところは見つからず、自宅で介護するしかない。武田真一キャスターは「介護の空白。どうすれば安心して介護が受けられるのか。徹底して考えます」と取り上げた。
都内で一人暮らしの岡根香代子さん(89歳)は、これまで週4日デイサービスに通っていたが、突然、利用できなくなった。コロナ対策で利用制限ができ、体温が37度を超えると帰宅を求められるようになったからだ。発熱しやすい香代子さんは、多い時は週2回、途中で帰宅せざる得なくなった。
発熱しやすい89歳の母はデイサービスから拒否された
香代子さんが通っていたデイサービス事業所は、人数を減らし、カラオケを中止するなどの対策をとっているが、施設長の藤原健治さんは「葛藤しています」と話す。「みなさまの安全も配慮しなければならないし、職員は自分たちの安全も考えなくてはいけません。『申し訳ないです』というお電話をさせていただくことが何度かありました」
香代子さんは自宅訪問サービスに切り替えたが、受けられるのは看護師の訪問と入浴介護だけだ。
青森県で若年性認知症の夫(64歳)を14年間介護してきた前田美保子さん(62歳)は、緊急事態宣言でデイサービスが2週間休業となり、自宅で夫を入浴させるのに苦労している。サービスは再開したが。今度は利用を控えるように求められた。同居する家族が治療のために県外の病院に通っているためで、感染リスクが否定できないというのだ。
取材を担当した小林さやか記者は、「デイサービスが通常通りというのは59・9%、利用制限が25・1%、休止が3・2%もあります」と報告する。経営がたちかなくなって、「廃業・解散した事業者も、8月(2020年)までで313件。これは去年の263件の20%増です」(小林記者)。事業所がなくなれば、利用者は行き場がなくなってしまう。
利用できなくなった時に、どんな手立てがあるのか?
武田キャスター「利用できなくなった時に、どんな手立てがあるのでしょうか」
小林記者「訪問介護などの代替サービスを探す。また、介護施設やケア付きホテルなど一時避難施設に移るなどです」
それが見つからないから、家族は苦労しているのではないのか。東洋大の早坂聡久准教は「介護保険法ができて20年になりますが、介護事業者と労働者の献身で支えられているのが実態です。また、未曽有の人材不足にもなっています。基本報酬の引き上げを急がなければなりません」と指摘する。
慶應大の宮田裕章教授「今後の話になりますが、いまは対面のカラオケなんかはできませんが、遠隔サポートを使って、好きな娯楽とか、あるいは話題ごとに集まるといったことができるようになります」
介護を必要とする人や家族は、きょうあしたをどうするかと切羽詰まっているのに、いつ実現するかわからない話ばかりされても何の役にも立たない。武田キャスターの「徹底して考えます」という意気込みの割には、中身は拍子抜けだった。
※NHKクローズアップ現代+(2020年10月7日放送「あした介護が受けられない~コロナ長期化が生む"介護の空白"~」)