100億円以上のビル物件を1棟丸ごと購入、賃料収入を狙う
商業ビルにも異変が起きている。
銀座のテナントビルに急増する空き室は、以前はすぐにうまった1階でも、テナントがなかなか決まらない。銀座では解約申し入れから退去まで3カ月から半年の予告期間が多いため、今は入っているテナントも、実は退去決定済みの「隠れ空き室」の可能性があるという。
これを、海外との取引が多い不動産運用会社の賣間(うるま)正人さんは「宝の山です」と話す。ターゲットは100億円以上のビル物件。1棟丸ごと購入し、賃料収入を狙う。いま空き室があっても、巨額資本には中長期的な投資として値上がりを待つ余裕があるということか。中東の投資ファンドやアジアのプライベートバンクなど20社近くから問い合わせがきているそうだ。
欧米の大都市がコロナによりロックダウンまでしたのに対し、「東京は影響が比較的軽微で、魅力が高まった」と不動産サービス会社は分析する。そこに金融緩和であふれた巨額マネーが流れ込み、今年上半期の商業用不動産投資額は1兆6000億円に達して世界の主要都市で1位だった。「東京はホットスポット」(不動産サービス会社の担当者)、「かぶりつきやすい物件がある。これはチャンスで、熾烈な戦いです」(賣間さん)
明治大学の野澤千絵教授(都市政策)は「これでよかった、で終わらせてはいけません。世界中から投資が集まることで本来、東京に住みたい人が住めない事態にきちんと対応しないといけない。災害や過密対策にはゆとりや分散が重要で、地方・郊外のやる気も問われる」と、いびつな現状に警鐘を鳴らしている。
※NHKクローズアップ現代+(2020年10月01日放送「追跡 都心の不動産売買」)