いま、都心の高額不動産が飛ぶように売れている。コロナ禍の銀座ではテナントビルの空き室が急増中だが、世界の投資マネーが東京に集まりつつある。一方にはローンが払えずに住宅を手放す人もいて、新たな格差、いびつな事態が進む。
9月(2020年)、湾岸エリアのマンション売り出し見学会に客が詰めかけた。築13年2LDK・都心一望の物件は、新築時4500万円が8000万円。それでも13組の見学者が並んだ。「予想に倍する客が来て対応しきれないぐらい」と担当者も驚いた。
都心物件の人気を支えるパワーカップルと呼ばれる共働き夫婦
コロナウイルスの感染拡大で地方移住が進むといわれるが、7月に大手人材情報会社が住みたい環境について在宅勤務経験者約500人にアンケートすると、60・2%が「都心に」と回答した。
東京・有明のマンションを7月に5000万円台後半の価格で購入した30代の共働き夫婦の場合―。夫は東京駅近くの大手コンサルティング会社に勤め、テレワークを経験。一時は埼玉県や千葉県の郊外物件も検討したが、「在宅勤務に慣れた分、通勤時間を負担に感じるようになった。高価格でも自転車で通える場所にした」という。この人はコロナによる収入減の影響をほとんど受けなかった。都心物件の人気を支えるのは、パワーカップルといわれる共働きの、一定以上の収入がある人たちだ。
コロナ禍で手放された物件に投資する動きもある。「世の中がパニックのときほど、市場のひずみを取れる。投資家にとってはチャンス」と、投資家の李天琦(リ・テンキ)さんは語る。ATシステムを駆使して安く売り出された物件を探し、即金で購入するやり方だ。この半年で1億円以上を投資した。980万円で売り出された新宿区内の物件を700万円に値引きして買い入れると、すかさず売りに出し、即日1000万円で売れた。これからも「買い付けをドンドン進めたい」という。