新型コロナウイルス感染が東京に急速に広がった今年夏(2020年)、感染震源地としてやり玉に挙がったのが新宿・歌舞伎町だった。小池百合子東京都知事も「夜の街」は危ないと名指しし、ホストクラブやキャバクラばかりでなく、料理店、居酒屋などの客足もばったり途絶えた。感染対策を徹底して営業を続けても、存続の危機に追い込まれる店が多い。
武田真一キャスターは「8月の1か月間、私たちはこの街にカメラを入れ、ここで働き、暮らす人たちの声に耳を傾けました」とリポートした。
最古参ホストクラブは店内全体を抗菌コーティング
50年の歴史を持ち、歌舞伎町でも最古参のホストクラブ「愛 本店」は、入居するビルの老朽化のため移転したが、これを機に店の規模を縮小した。新しい店で最も力を入れているのは、感染対策だ。換気をするためのサーキュレーターを何台も設置し、店内全体を抗菌コーティングした。それでも、客足は鈍い。内勤スタッフのはなさんは「ホント、八方ふさがりなんです」と、ちょっとあきらめ顔だ。
夜の街のマイナスイメージはさまざまな業種に広がっている。24時間営業の生花店は「花の売り上げは、最悪のときは9割減です。(歌舞伎町は)もともと悪いイメージが強いせいで、(感染源のように)言われちゃったのかなあ」と嘆く。老舗居酒屋はクロ現+が取材している最中に電話が鳴り、この日のただ1組の予約客にキャンセルされてしまった。
しかし、歌舞伎町は現在では感染震源地ではまったくない。新宿区役所で開かれている飲食関連の経営者の勉強会で、新宿保健所の高橋郁美所長は「ホストクラブさんの感染者は減っていると思っています。むしろ、会社員の方とか、家族の感染、高齢施設で多い状況です」と報告している。管内の飲食業関連の1か月間の感染は、7月は494人と多かったが、8月は51人に激減した。吉住健一新宿区長も「感染対策に日本一力を入れている繁華街」と自負する。
もうレッテルをはがすのは無理。下心が出たら来て欲しい
厳しいのは、悪いイメージが払拭されないことだ。吉住区長も「実態を理解してもらえない。レッテルをはがすのが難しい」と語った。飲み屋などが多く入居するビルのオーナーはこう話す。
「解決策は、こちらから何か動いたところで無理だと思っています。メディアで出てくるマイナスイメージを忘れてもらう、(自粛に)飽きてもらうしかありませんよ。そのために、いまは準備しています。
飲みたいな、お金持ったから使いたいな、ちょっとした下心、他人に言えない楽しみという欲が出てきたとき、来てほしいですね。そのために、従来のあいつら品がないよねという歌舞伎町をずっと続けていきます」
猥雑な歓楽街という文化を消してほしくない。
※NHKクローズアップ現代+(2020年9月30日放送)「"夜の街"と呼ばれて~新宿 歌舞伎町~」