死に行く人の最後の望みを叶える財団を作りたい」という謎の資産家風老女・佐藤和子(倍賞美津子)は1億円もの資金を提供し、元暴力団担当の刑事・島田修吾(江口洋介)に協力を求めてきた。
島田はかつては優秀な刑事だったが、拳銃を持った暴力団員と揉み合っているうちに拳銃が暴発し、たまたま近くにいた島田の息子に命中して死なせてしまった。そのため妻は家を去り、島田は警察を辞めて私立探偵となり、酒浸りの日々を送っていた。
男は病院を抜け出し、秘密の隠し部屋で爆弾をつくっていた
佐藤がそんな島田を選んだ理由は「あなたには親の気持ちや、死を見つめた人の気持ちが分かるから」だった。
佐藤の念願が叶って「サイレント・エンジェル財団」が設立され、最初の依頼人となったのが、末期がんの入院患者・武村正介(塩見三省)だった。武村の主治医によれば、元ホームレスだった武村は、生活保護を受けてアパートで一人暮らしをしているが、戸籍も住民票もなく、「武村」というの名前も偽名らしいという。
「もうじき死ぬのは分かっている。頼むから好きなところで死なせてくれ」という武村の最後の願いは「アパートに戻って遺品の整理をしたい」という一見ささやかなものだった。だが、その裏にはとんでもない思惑が隠されていた。
そんなことを知るよしもない島田は、探偵事務所の助手・小嶋亜花里(上白石萌歌)、訪問看護師・寺本春紀(志尊淳)とともに武村をアパートに連れ帰り、望みは叶えられたかに見えた。
しかし、島田は、武村が帰り際にふと口にした「俺はかつて爆弾犯だった」という言葉が胸に引っかかっていた。さらに、武村は小説を書くことが生き甲斐だったが、過去に生活保護受給者の宿泊所で小説を侮辱されたことがあったことも分かった。
そんなとき、島田らのもとに、武村が病院を抜け出したという報せが入る。「爆弾犯」という言葉が気になる島田は、自分の父親の同僚だった元刑事・高津川直也(西郷輝彦)に武村のことを尋ねると、高津川から「あいつは無政府主義者のアナキストだ」と告げられた。
島田ら3人が武村の居場所を懸命に探しているころ、当の武村は秘密の隠し部屋にこもり、なんと爆弾を作っていた。「好きなところで死にたい」というのは、この爆弾製造用のアジトのことだったのか? 武村は人生の最後に一体何をしようとしているのか?
危険を察知した島田らは周辺の住人に避難を呼びかけるのだが......。(よる9時放送)
寒山