若者たちのバックグラウンドの描写は、手薄感が否めない
とはいえ、こうした人々に向き合うブリュノとマリクは常に真剣ながらも、どこかほどよく力が抜けている。自閉症者の〝クセ〟や〝性格〟に振り回されても、向き合うことから目をそらさずにいれば、必ず光が見えてくる。しかも、健常者・障がい者も、マジョリティー・マイノリティーも関係なく、誰もがつい笑顔になってしまう明るく輝く未来が。彼らはそのことを幾度とない経験からすでに知っているのだ。ラストは感動とともに「なぜ他人のために?」の問いの答えを受け取ったような気持ちになれた。
ちなみに、登場人物の介助者と自閉症者の多くは役者ではなく本物。ヴァランタンを演じたマルコ・ロカテッリも弟が深刻な自閉症だったからオーディションに参加したという。それもあってか、自閉症者のシーンは非常に細かく描かれ、見応えがあった。
しかし一方で、<寄港>の若者たちのバックグラウンドについての描写は手薄だった感が否めない。上映時間の尺の問題もあったか。もう少し掘り下げてほしかった。というわけで本当は☆4つのところを一つ減らしました。
バード
おススメ度 ☆☆☆