9日(2020年9月)、自民党総裁選の公開討論会で、菅義偉官房長官が「待機児童対策に終止符を打ち、出産を希望する女性たちを支援する。不妊治療の公的医療保険適用を実現したい」と話したことが波紋を呼んでいる。
現在、人工授精や体外受精などの不妊治療は健康保険適用外。菅氏のプランはこれを保険適用にしようというものだ。実際に、50万円以上かけて1年以上不妊治療を続けている女性(35)は、「うれしい。時間がないので早くやってほしい」と歓迎し、「不妊治療にお金がかかると夫婦の生活ができなくなる。体外受精はさらに費用がかさむので無理だろうと思っている」と話した。
不妊治療に300万円以上かかる人が2割もいる
43歳で出産した女性は「人工授精を4~5回。2年の治療で300万円以上かかった。しんどかった」という。調査によると、不妊治療に300万円以上かかったと回答した人は19%。500万円以上かかったという人もいた。美馬レディースクリニックの美馬博史院長によると「治療費が高くて、不妊治療を諦める人もいる」と話す。
産婦人科医の宋美玄さんは「不妊治療の相談者は多く、専門施設では待ち時間も長いが、少子化対策としては疑問だ。団塊ジュニア世代は生殖年齢を超えてしまっており、難しい。また施設間での治療の質の格差も大きく、保険適用として全国一律で行うには質の担保が難しくなる」と話した。自治体によっては不妊治療に助成金を出すところもあるが、多くは所得制限があり、ハードルは高いままだ。
社会学者の古市憲寿「お金の余裕のありなしで不妊治療ができない場合があるのであれば、社会が支援するのはいいこと。でも生む自由と生まない自由があるべきで、不妊治療にアクセスしやすくなることが、生みたくない人へのプレッシャーになるとしたら酷な話」
作家の中江有里「私も団塊ジュニアで、治療をするには遅すぎる。少子化はわかっていたことなのだから、どうしていまさらなのか」
宋医師は「日本は不妊治療大国で、治療数は世界一多いが成功率は低い。なぜ成功率が低いかというと、それは治療のスタートが遅いから。若いうちから子づくりできる社会にしていけば変わってくる」とコメント。
小倉智昭キャスター「社会基盤ができていないから晩婚化して、子づくりが送れている。菅さんは待機児童ゼロと言っているが、そんなに簡単ではない」