屋台のたこ焼き屋のオヤジだった大藪彦次郎(寺島進)は喧嘩で服役中、病気の女房を救うために一念発起し、猛勉強の末に医大に合格して医師となった異色の経歴の持ち主だ。現在は亡くなった妻の姉・内倉享子(戸田恵子)が京都・東山で開いている「東山三条医院」に勤務している。
言葉遣いや態度はたこ焼き屋時代そのままの荒っぽさだが、急患の知らせがあれば、お手製『救急自転車』に乗って駆けつけ、街の人々から『彦ちゃん』と呼ばれて頼りにされている。
京都府警の後白河刑事は超エリート女性医師・花井に疑惑を抱く
ある日、彦次郎が密かに思いを寄せる小川志乃(黒谷友香)が女将を務める老舗旅館「梅むら」から、客の男性が倒れたという知らせが入った。彦次郎が例によって救急自転車で駆けつけると、遺伝子学の権威である医科大学教授・斎藤昭二(大河内浩)が座敷で倒れ、苦悶していた。その場にいた女性医師・花井舞香(矢田亜希子)が応急処置を行っており、斎藤は駆けつけた彦次郎に胸の痛みを訴えた。そして、花井をにらみつけながら「殺される」とつぶやき、息絶えてしまった。
単なる心臓発作ではないとの彦次郎の推察の通り、被害者が服用した液体サプリメントの容器から毒物反応が出た。そして、そのサプリメントは、花井が常日ごろ斎藤のために処方しているものだった。
花井は斎藤と共同で最先端の遺伝子研究を行っていた超エリート医学博士で、この日は斎藤に頼まれていた彼の息子と結婚相手の『遺伝子マッチング検査』の結果を届けに来たという。エリート医師らしく、冷静に受け答えする花井だったが、彦次郎はそんな花井の腕に蕁麻疹(じんましん)が出ていることに気づく。さらに、座敷のゴミ箱からは「お前は人殺しだ」と記された斎藤宛ての脅迫状も見つかった。
その後、毒物が混入された薬の容器の外側に、皮膚科でよく処方される塗り薬が付着していたことが判明。花井の蕁麻疹を思い浮かべた京都府警捜査一課刑事・後白河孝麿(宇梶剛士)は、彼女に対して疑惑を抱くようになった。
一方、花井が勤務する「村岡クリニック」の見学に出向いた彦次郎は、医療を金儲けの道具としてしか見ていない所長・村岡大吾郎(小堺一機)の血も涙もない経営方針を目の当たりにし、村岡の白衣の襟をつかんで「医療現場に貧富の差を持ち込むな!」と激怒する騒ぎを起こしてしまう。