早い避難のカギとなる洪水予測システムが試された
今回気象庁と国交省は、異例ともいえる最大級の警戒呼びかけを連日行い、鹿児島県十島村では、ヘリによる島外への避難というかつてない対策までとった。自治体の取り組みも真剣だった。中で、宮崎県西都市の試みが注目された。
西都市は、東大とJAXAが研究中の「Today's Earth Japan(TEJ)」という洪水予測システムの実証実験に参加していた。このシステムは、川の流れ、土壌、植生から水の量、保水力、風、温度などを解析して、最大39時間前に洪水予測を出せる。気象庁が出す予報は6時間前だから、格段に早い。
宮崎には、48時間で1000mmという予報が出ていた。とんでもない雨量だ。洪水が予想されると、地図の上にピンが立つ。圏内で2カ所にピンが立った。が、西都市には立たない。にもかかわらず6日午後、市は避難勧告に踏み切った。暗くなってからでは、避難できないからだ。
そして6日深夜、10号が最接近した。しかし雨量は少なく、川は氾濫しなかった。結果はTEJの予想通り。ピンが立った所は、氾濫危険水位に達していた。西都市の担当者は、「この経験を、今後に活かす」という。
「スーパー台風」が現実味を帯びてきた今、建物が密集した都市部では、建物の状況に神経質にならざるを得ない。小さな飛散物でも凶器になるからだ。NHK社会部の島川英介・災害担当は、「建物をどう補強していくか公的支援も考える必要がある」という。次の巨大台風はいつになるのか。時間はあまりないはずだ。
※NHKクローズアップ現代+(2020年9月8日放送「台風 新たな時代にどう備えるのか」)文
ヤンヤン