菅義偉の生き方をひと言でいえば、「ナンバー2人生」といえるだろう。法政大学の空手部では副将。横浜市議時代は影の市長。安倍政権では影の総理。
そんな男が71歳にして初めて主役になろうとしている。総裁選立候補の会見に臨んで、水色のネクタイを締め、ややはにかんだ薄笑いを浮かべながら、「安倍政権を継承する」といった。
早食い、下戸で、好きなのはパンケーキ。菅ほど「男の顔は履歴書」という言葉を思い起こさせる容貌はなかなかない。市議や国会議員になりたての頃のビデオや写真を見ると、もっとふっくらとして、にこやかな表情をしている。
永田町の荒波にもまれているうちに、清濁の濁ばかりを呑み続け、相貌が変容したのであろう。麻生太郎、二階俊博と並んで、永田町の"三悪相"である。
こんな顔を毎朝、ワイドショーで見せられるのかと思うと、今からメシがまずくなる。
文春、新潮は、「祝! 菅総理誕生スキャンダル」でもやってくるのかと楽しみにしていたが、まだ正式に決定していないこともあってか、何もない。
両誌ともに、二階の古狸が、安倍の要請を密かに受けて、全国の自民党員たちの意向を無視し、両院議員総会でさっさと決めてしまう「派閥のボスたちによる談合」だと批判している。
永田町のボス猿談合で選ばれた菅義偉の「悪相」を、毎朝ワイドショーで見せられるのかと思うと、今からメシがまずくなる
菅政権は「居抜き乗っ取り内閣」(森功=新潮)「二階の傀儡政権」ではないかという見方があるが、私は、ここでも書いたように、安倍首相が自分の力を温存して、院政を敷くための「影武者政権」だと考えている。
それを菅が受け入れなければ、二階派、細田派、麻生派が一致して菅官房長官を推すことにはならなかったと思う。
文春によれば、「安倍政権の骨格だった側近軍団はそのまま引き継がれる可能性が高い。骨格とは、杉田和博官房副長官、和泉洋人首相補佐官、今井尚哉首相秘書官、北村滋国家安全保障局長の4人。中でも杉田氏と和泉氏は、既に菅氏から居残りを頼まれているそうです」(官邸関係者)。これでは、顔が菅に替わっただけで、中身は安倍のままである。
自分独自の政策など考えたこともない菅が会見で、「安倍政治の継承」を繰り返すだけだったのは当然なのだ。
だが、マスコミを弾圧することにかけては、安倍を凌ぐ陰険さと強引さがある。
官房長官会見での東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者に対する執拗な発言封じ込めと嫌がらせ。『報道ステーション』へのたび重なる恫喝。NHK『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターを番組降板にまで追い込んだなど、枚挙に暇がないほどである。
昨日の会見でも、"天敵"望月記者が、「今後の首相会見ではフリーの記者を含めた記者たちの厳しい質問に答える気があるのか」といっている途中で司会者に遮らせ、いつものように木で鼻を括った、「限られた時間のなかでルールに基づいて記者会見」をするといっただけだった。
これでは、安倍の顔をすげ替えた菅人形が登場しただけではないか。