武田真一キャスター「新型コロナウイルスで収入が激減した人を狙った隠れヤミ金融や給料ファクタリングの被害が広がっています」
父の代から50年以上続いた板金会社をたたむことになった男性は、「知らないうちにヤミ金に手を出していたのです」と話す。「ウェブで見て、こんなのがあるやと。借金じゃないのかと思いましたが、融資というので借りてしまった」
融資の手数料として払った金額は、年利1000%にも相当する。返済が間に合わなくなって、会社の資産や備品を売り払うしかなくなってしまったのだ。「冷静に考えたら、なんであんなものを利用したのだろう」と悔やむ。
オレオレ詐欺の片棒を担がされたり、売春を強要されたり...
東京情報大学の堂下研究室は、見知らぬ他人同士がSNSなどで資金を提供したり、受けたりする個人間融資の調査を2年前から進めている。堂下浩教授は「アカウントの数が急に増えたのは今年(2020年)6月頃からですね」という。新型コロナウイルスの感染拡大による商店の営業自粛や企業の事業縮小の影響が深刻になり始めた頃だ。
個人間融資のサイトには「家賃支払いのため6万円借りたいです」「あしたの朝までに5000円必要です」といった書き込みが後を絶たない。書き込むとすぐに返信が来て、身分証明書のコピーを送らされ、間もなくお金が振り込まれる。
当然ながら、金利や手数料は高く、返済が滞ると、さらに法外な利息を要求され、身分証明書や勤務先をSNSで拡散すると脅される。利息の代わりに、性交渉を要求される女性も少なくない。
個人間融資に資金を出しているのはどんな連中なのか。「クローズアップ現代+」が接触した男性は、Tシャツに短パンで現れた。不動産業とか居酒屋をやっているという。「返済金が振り込まれなかったら、金融のプロに頼む。あとはその方々がどうやって回収するかは、私はわからないです。まあ正規ではないでしょうね」とうそぶいた。
ノンフィクション作家の石井光太さんは「ヤミ金業者が積極的にアプローチしているのです」という。個人間融資などではなく、個人を装ったプロのヤミ金融というわけだ。そして、いったんはまると、オレオレ詐欺の片棒を担がされたり、売春を強要されたりするという。
そもそも、個人間融資は違法ではないのか。「大阪いちょうの会」(関西ヤミ金融対策会議)の前田勝範さん(司法書士)はこう解説した。「個人間の融資といっても、友人、知人ではなくて、SNS等で複数回にわたってお金を貸したり、貸そうとしたりしているわけですから、貸金業とみなされます。無登録であれば重い刑事罰です」