秋の味覚といえばサンマだが、今年は庶民にとっては高嶺の花となりそうだ。先月末(2020年8月)に札幌で初取引されたサンマには1匹1875円の値段がつき、キロ単位では1万6200円と、アワビの1万2960円を上回った。札幌市の回転ずし店では、サンマは大トロと同じ1貫390円というから驚きだ。
全国有数のサンマの水揚げ量を誇る岩手・大船渡市では先月29日、今シーズン初のサンマの水揚げが行われたが、第8三笠丸の松谷裕漁労長は「初水揚げって言ったって、わずかな魚だよ。魚影がない。全然商売にならない」と語る。東京都内のスーパー「アキダイ」では、例年より2割高い1匹285円で販売している。秋葉弘道社長は「庶民の魚というには、程遠い価格帯です。なかなか手を伸ばしにくいという現状ですね」。買い物客も「(家族)3人で食べたら結構な値段ですよ。どうしようかな」と迷っていた。
都内の居酒屋「秋刀魚」では、看板メニューの「さんまずし」にいつもはとれたてのサンマを使っているが、今年は冷凍サンマでしのぐ予定だ。冷凍サンマを扱う業者によると、最近、注文が殺到しているという。
日本沿岸の水温上昇で、漁場が本土から離れた?
価格高騰の理由について、東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「日本沿岸の海水温が高いため、サンマのいる漁場がかなり本土から離れてしまっている」と話す。とれるサンマも全体的に小ぶりで細身だという。
代わりに価格が下がっているのが、高級魚の大間産のマグロや真鯛だ。コロナ禍で飲食店の仕入れが減って小売価格が下がっていることや、結婚式などお祝いの席が減って需要が落ちていることが影響している。養殖の真鯛は例年の4割安だという。
浜田敬子(「ビジネスインサイダージャパン」統括編集長)「インバウンド需要が減っているので、牛肉やメロンなども余っていると聞きます」
野上慎平アナウンサー「サンマは12月ぐらいには値段が落ち着くそうですが、(秋刀魚ではなく)冬『刀』になってしまいますね」