ワクチンを来年早々から国民全員に接種するというが、承認を急ぐあまり安全性を不安視する声がある
会見では、新型コロナウイルス対策も発表された。来年前半までに全国民分のワクチンを確保することに加えて、秋冬に向けて、季節性インフルエンザが流行することに備え、検査体制を拡充するなどの方針も盛り込まれた。
中でも重要なのは、現在、新型コロナウイルスは第二類指定感染症になっている。それを見直すことである。これまでは、陽性になれば無症状でも軽症でも入院措置になり、医療費もかからなかった。だがこれが外され、自己負担ということになれば、病院へ行くことを躊躇する人が増え、感染者を増やすことになるのではないか。
また、ワクチンを来年早々から国民全員に接種するというが、文春が報じているように、承認を急ぐあまり安全性を不安視する声がある。
「ワクチン開発に本来4~5年かかるのは、それだけ多くの人に治験を行い、有効性と安全性を担保できるかを確認するためです。今回、早さが重視され過ぎているきらいがあります」(大阪健康安全基盤研究所の奧野良信理事長)
また、医療費の増大につながるという問題もある。
日本は、アメリカのファイザーとイギリスのアストラゼネカと、ワクチンが完成したら供給を受けることで合意した。
文春によると、
「米政府は、ファイザーと一億回分のワクチンを約20億ドルで契約している。1人当たり約4200円。その他製薬会社と米政府との契約は、1人当たり20―42ドルだという。日本は契約金額を明らかにしていないが、全額を新型コロナ対策として確保した予備費で賄う方針だ」
東京大学大学院の五十嵐中客員准教授がいうには、日本の全ワクチン市場規模は年間2000から3000億円あり、価格次第だが、全国民に接種したらそれに匹敵するか、それを上回る5000億円にもなる可能性があるという。
逼迫している医療費をさらに危機的状況に追い込まないかと心配になるが、それよりも、そんなに早くワクチンができるのかという疑問に、政府や厚労省はきちんと答える義務がある。
さらに、経済回復を優先するあまり、安倍が会見でもいっていたように、高齢者と基礎疾患を持った人間だけを重症化させないことにコロナ対策を絞ることで、貧困層などへの目配りがおろそかになることが考えられる。
日本がコロナの感染者も死亡者も少ないのは、政府が有効な政策を打ち出したり、専門家と称する連中が有意義な助言をしたりしたからではない。
それを忘れて、コロナ対策をおざなりにすれば、今冬、痛いしっぺ返しにあうと思う。