安倍が辞任する。弱々しい病人になってしまったことが何かやりきれない。記者会見を1時間見続け、私はノートにこうメモした。「やはり何も成し遂げなかった人だった」

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不思議だったのは、安倍の在任中に拗れに拗れた日韓関係と日中関係について、記者の誰も質問しなかったことだ

   不思議だったのは、安倍の在任中に拗れに拗れた日韓関係と日中関係について、誰も質問しなかったことだ。

   両国との関係は、これからの日本の命運を決めるかもしれない重要な問題である。安倍が、私のやり方は間違っていなかったというのか、至らないところもあったというのか、韓国、中国の要人たちもテレビを注視していたはずだ。

   ここで何らかの謝罪のようなものがあれば、両国関係はいい方向に進むかもしれないのに、残念だった。

   1時間、見続け、ノートにこうメモした。

   「やはり何も成し遂げなかった人だった」

   辞任を聞いた石破茂が「驚いた!」といったように、このタイミングで辞任する理由は、安倍の会見を聞いても腹に落ちてこない。

   体調がよほど悪いというのは、テレビからも伝わってきたが、それなら通院ではなく、1、2週間入院して、それからでも遅くはない。

   実はこういう裏があったんだと、メディアがこれから書きたてるのだろう。

   突然の辞任は、次の総選挙で自民党が勝利するためではないかといわれているそうだ。かつて大平正芳首相(当時)が衆参同日選挙の最中に急死し、自民党が大勝したことがあった。

   安倍が全身全霊をかけてコロナ対策を行い、志半ばで病に倒れ、辞任したことを旗印に、衆院選を戦えば勝てると読んでいるというのである。

   あまりにもバカバカしい見方ではあるが、逆に見れば、そこまで安倍首相は追い込まれていたということかもしれない。

   ようやく安倍政権という"悪夢"が終わったのだから、安倍の亜流政権だけは絶対つくらせてはいけない。そう心に決めて、安倍に「ごくろうさま」といおう。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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