都内の公園の藤棚の下で、男の他殺体が発見された。男が着ていたスーツにあった「藤原」という刺繍を見た警視庁捜査一課「特命捜査対策室」第6係(文書解読係)警部補・鳴海理沙(鈴木京香)は、そのクセのある書風を見た瞬間、ハッと目を見張る。その書風は、鳴海が敬愛する鎌倉初期の歌人で、万葉集の撰者でもある藤原定家の筆跡を模した『定家様(ていかよう)』だったからだ。
と同時に、鳴海の脳裏には、ある未解決事件の記憶が甦っていた。今から10年前、国文学の権威である啓星大学教授・板橋京介(佐渡稔)が、研究室内で何者かに殺された事件だ。古書店「大蔵堂」の店主・倉木達也(合田雅吏)が「鑑定のため板橋先生に預けていた藤原定家の直筆による写本の《定家本》が消えた」と大騒ぎしていたことを思い出したのだ。研究室から消えたという古書が本物なら、国宝級の大発見であることは間違いない。
藤原定家に『恋』する鳴海、消えた《定家本》はどこに?
鳴海は定家への『恋心』のためか、いつもなら忌避する外回りの捜査を率先して開始し、後輩の巡査部長・矢代朋(波瑠)とともに、啓星大学国文学教授・真田誠(松下由樹)の自宅を訪問する。真田は10年前、学内の女性教授第1号候補として有望視される准教授だったが、板橋から猛烈なパワハラを受けていた。そのため当時、板橋殺害の被疑者の1人として捜査の対象となったが、アリバイが成立して容疑は晴れた。
真田は事件を再捜査する鳴海らの聞き込みに快く応対してくれたものの、鳴海らは有力な手がかりとなる証言を得ることはできなかった。そんな中、公園で殺されていた男は、8年前まで「大蔵堂」に勤めていた藤原伸一(おかやまはじめ)だと判明した。
2つの殺人事件は『国宝級のお宝』が絡んだ連続殺人事件の可能性があると聞いた「特命捜査対策室」室長・古賀清成(沢村一樹)は、事件を解決すれば世間の注目を集める手柄になるとの下心から、両事件を関連付けて捜査することを正式決定した。
果たして《定家本》は一体どこに消えたのか。改めて真田に事情を聴く矢代に、真田は「あなた、本当に刑事さん?」「ただの言いがかりじゃありません?」と余裕綽々で答える。一方、鳴海は独自のやり方で捜査を進めていたが、そのことが相棒の矢代を絶体絶命の危険に晒すことになる。真犯人と直接対峙した矢代は......。(よる9時放送)
寒山