「嘘みたいなホントの話」と、うがい薬をコロナ薬に宣伝した吉村洋文大阪府知事。ただのオッチャンの化けの皮がはがれた。「美談」だった雨合羽の寄付も庁舎にゴミとして山積みだ

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   吉村洋文大阪府知事の化けの皮がはがれた。8月4日の会見で、「嘘みたいなホントの話」と前置きをして、ポビドンヨードを含むうがい薬を使うとコロナ陽性者が減ると発言した。そのため、うがい薬が店頭から消えてしまった。ネットでは早速、高値で売り出す輩も出た。

   だが、日本医師会の中川俊男会長は会見で、市販のうがい薬の効果について「現時点ではエビデンス(根拠)が不足している」と厳しく批判したのである。他の医師からも、甲状腺疾患患者の病状を悪化させる、妊婦の胎児に影響が出る可能性があるとも指摘された。

   慌てた吉村は、「誤解がある。予防薬でも治療薬でもない」と打ち消したが、後の祭りである。

   文春でも、吉村は「5人以上の飲み会は自粛」と訴えたが、自らが5人という数字に「科学的根拠はない」と話していたと報じている。さらに4月14日に、医療従事者用の防護服が不足していると呼びかけ、3日で30万着以上の雨合羽が寄付されたそうだ。しかし、すぐに防護服が出回り始めたので、多くが不要になり、14万着が大阪市庁舎ロビーに山積みになっていたという。

   コロナ禍の中で「最も評価される政治家」といわれる吉村の実体は、先見性も最低限の医学的知識もない、ただのオッチャンだったのである。

  • 馬脚を現した吉村洋文大阪府知事
    馬脚を現した吉村洋文大阪府知事
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朝日記者に対する官邸報道室職員の暴力。他社の政治部記者はなぜ怒らない?だから「権力の走狗」と言われる

   ところで、昨日(8月7日)、安倍晋三首相が49日ぶりに広島で会見を開いた。わずか20分程度で、内容はこれ以上ないというほど空疎だった。頬はこけ生気がなく、持病の悪化を思わせた。

   だがここで、司会役の広島市職員が15分過ぎたところで「強制終了」させようとした時、看過できない「事件」が起きたのである。朝日新聞記者が、「総理、まだ質問があります」と上げた手を、官邸報道室の職員が妨害するため、記者の腕をつかんだのである。

   これまでも、内閣記者会から事前に出させた予定調和の質問にだけ答え、他の記者の質問を無視して会見を打ち切ることは何度もあった。だが、暴力的に記者からの質問を打ち切ることなどはなかった。民主主義を標榜している国のリーダーが、自ら民主主義を踏みにじったのである。

   毎日新聞(8月6日付)は「追加質問をしようとした同社(朝日新聞=筆者注)の記者が首相官邸報道室の職員から右腕をつかまれたとして、報道室に抗議した」と報じている。

   ここでおかしいと思うのは、「右腕をつかまれたとして」という表現である。会見には各社の記者もいて、その連中は現場を見ていたはずである。だったらなぜ、「何をやっているんだ!」と声を上げなかったのか。「官邸側は否定」(毎日)できるわけはない。

   政治記者は権力の走狗だから、官邸に逆らえるわけはないと、したり顔にいう輩がいる。そんな記者を、社はなぜ高い給料を出して飼っておくのか。安倍官邸はけしからんが、それに唯々諾々と従って、国民の知る権利に答えようとしない記者という腑抜けたちのほうが、より始末が悪い。もっと怒れよ、真っ当に!

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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