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ALS患者「嘱託殺人」の医師は100%悪いのか...安楽死をタブー視せずに議論しよう

   ALS患者、林優里(51)を死に至らしめた「嘱託殺人容疑」で、京都府警が大久保愉一(42)と、共犯の山本直樹(43)を逮捕した。林は、同志社大を卒業後、アメリカに留学して建築を学び、帰国後、都内の設計事務所に勤務していたが、ALSを発症してしまった。これだけの経歴を残している女性が、動けず、飲食も独りではできず、ヘルパーに24時間介護を受ける辛さは、私などが想像できるものではない。

   次第に、死を望むようになっていった彼女は、「ドクターキリコになりたい」とツイッターで発信し、安楽死をさせることを謳っていた大久保と、ツイッターのダイレクトメッセージで連絡を取り合うようになった。彼女から、合計130万円が、共犯の山本の口座に振り込まれていたという。

   週刊新潮で、20年以上も神経系の難病を患い、両足や手首から先は動かせないユーザーネームくらんけは、スイスで安楽死を受ける権利を獲得したそうだ。そのくらんけは、大久保が100%悪いとは思わないという。<「しかも、林さんは生きることに絶望していた。ふたりの気持ちを考えたら、先生を有罪にしてしまって本当にいいのでしょうか」>

   難しい問題である。新潮がいうように、安楽死をタブーにして、議論さえ封じる日本では、いずれ同じような事件が起こる可能性はある。コロナで死が身近に感じられる今こそ、安楽死について議論を始めるいい機会なのかもしれない。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)、『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)、『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、 『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)、『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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