エクモを詰まらせる未知の血栓の可能性も 保健所の態勢強化、医療用マスク確保など課題山積

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   再び猛威を振るい始めた新型コロナウイルス。感染再拡大の震源地・東京では、医師会が行うPCR検査の現場で検査数が急増している。20代や30代の若者だけではなく、重症化するリスクが高い60代以上の高齢者の感染者が増えているのだ。

   東京・江戸川保健所では今、感染者などからの相談が殺到している。第1波のピークが過ぎたとされる6月には1日30件ほどだった相談数が、再び1日200件ほどに急増している。江戸川区が7月20日に発表した感染者数は21人と、第1波のピークを越えつつある。

  • 新型コロナウイルス(NHKの番組ホームページより)
    新型コロナウイルス(NHKの番組ホームページより)
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患者が急増する中、感染経路の追跡は次第に困難に

   4月のピーク時にも業務が逼迫し、一時40人増員したが、再び増強を強いられている。その理由の1つは、国の方針が変わり、第1波のときに比べて担う業務が増えているから。増えた業務は、無症状の濃厚接触者へのPCR検査。たとえば、7月8日に判明した保育士の感染では、園児や保育士などの濃厚接触者は無症状も含めると70人に上り、全員への連絡や検体の採取などに追われている。

   患者が急増する中、感染経路の追跡は次第に困難になってきている。全国の保健所の情報をもとに感染経路の分析を行う国立感染症研究所の専門家チーム「FETP」ではこの日、感染者が急増していた鹿児島について現地調査の報告が行われた。当初は、その感染は鹿児島市のショーパブで発生した感染者100人以上の集団クラスターが中心だと考えられていた。しかし、このクラスターとの関連が見えない事例が出てきているという。

   感染経路の追跡には保健所からの情報が不可欠だが、複数の保健所で業務が逼迫し、感染者の追跡が難しくなっているという報告があった。感染拡大を防ぐためには、保健所の態勢を強化する何らかの方策が必要だとチームでは考えている。

米国が医療用マスク「N95」を囲い込み

   感染が再拡大する中、懸念されるのが医療資材の確保だ。第1波のときに深刻な不足に陥った医療用マスク「N95」について、国は直接医療用マスクなどを配布する態勢を強化している。しかし、マスクの輸入業者は今も危機感を抱いている。6月、シンガポールにある米国メーカーの現地法人から25万枚のN95を輸入しようとしていたが、空輸の途中の空港で止められてしまった。仲介業者によると「米国が国防生産法を発動し、医療資材を囲い込もうとしたためだ」という。

   2月にはマスクメーカーが日本向けN95をタイの自社工場で生産していたが、日本への輸出が禁止され、タイ国内にマスクを出荷するように求められた。このためメーカーでは国内生産を増産している。工場を24時間体制で稼働し、去年の3倍にあたる量を生産している。

   医療用マスク「N95」について、厚生労働省は「当面の間の必要量は確保できている」とする一方で「大規模な感染拡大の可能性もあり、大丈夫とは言えない」としている。病床の確保にも警戒感が強まっている。7月15日現在、自治体が確保している病床数は全国で1万9496床に対し、入院患者の数は1717人。しかし、今月に入って入院患者は2.5倍に増えている。東京では軽症者の療養用のホテルの確保も課題となっている。東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「第1波が収まり、秋冬への準備を使用という矢先に感染が拡大したため、重症度に応じた医療の提供は安心できる状態ではない」と話している。

抗血液凝固剤も効かない未知の血栓の可能性

   さらに厄介な問題も浮かび上がってきた。重症患者の命をつなぐ最後の砦ともされる「エクモ」に新たな脅威が持ち上がっているのだ。エクモは、体内から血液を取り出し、酸素を加えて戻す人工心肺装置だが、血栓ができるケースが続出。血栓が詰まった場合、患者の命を守るためにはチューブを30秒以内に取り替えるなどの困難な作業が必要になる。また、国立国際医療研究センター病院では、血液を取り出して有害な物質などを取り除く特殊な医療機器があるが、血液を固まりにくくする抗凝固剤を投与しても、わずか30分ほどで回路が詰まり、動かなくなってしまうケースが相次いでいる。同センター病院の医師は血液がベタベタするほどの未知の血栓ができているのではないかと考えている。

   抗体についても厄介な指摘がある。感染した患者数十人の血液を調べた北里大学の片山和彦教授によると、患者によって抗体の量に差があることを指摘している。さらに、一度できた抗体の量が数週間で減っているケースも見つかった。血液中に抗体を作るワクチンの開発に影響が出るおそれがあるという。

   賀来特任教授は「まだ新型コロナウイルスの免疫についてはわかっておらず、研究の積み重ねが必要。ウイルスの変異についてもわかっていない点が多く、さらに人への感染の仕方も、接触感染・飛沫感染だけではなく、マイクロ飛沫がどのくらい関係しているのかも調べる必要がある」と話した。これまで以上の感染防止への取り組みが必要なことは間違いない。

   バルバス

   ※NHKクローズアップ現代(2020年7月21日「感染再拡大 最前線の現場で何が」)

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