抗血液凝固剤も効かない未知の血栓の可能性
さらに厄介な問題も浮かび上がってきた。重症患者の命をつなぐ最後の砦ともされる「エクモ」に新たな脅威が持ち上がっているのだ。エクモは、体内から血液を取り出し、酸素を加えて戻す人工心肺装置だが、血栓ができるケースが続出。血栓が詰まった場合、患者の命を守るためにはチューブを30秒以内に取り替えるなどの困難な作業が必要になる。また、国立国際医療研究センター病院では、血液を取り出して有害な物質などを取り除く特殊な医療機器があるが、血液を固まりにくくする抗凝固剤を投与しても、わずか30分ほどで回路が詰まり、動かなくなってしまうケースが相次いでいる。同センター病院の医師は血液がベタベタするほどの未知の血栓ができているのではないかと考えている。
抗体についても厄介な指摘がある。感染した患者数十人の血液を調べた北里大学の片山和彦教授によると、患者によって抗体の量に差があることを指摘している。さらに、一度できた抗体の量が数週間で減っているケースも見つかった。血液中に抗体を作るワクチンの開発に影響が出るおそれがあるという。
賀来特任教授は「まだ新型コロナウイルスの免疫についてはわかっておらず、研究の積み重ねが必要。ウイルスの変異についてもわかっていない点が多く、さらに人への感染の仕方も、接触感染・飛沫感染だけではなく、マイクロ飛沫がどのくらい関係しているのかも調べる必要がある」と話した。これまで以上の感染防止への取り組みが必要なことは間違いない。
バルバス
※NHKクローズアップ現代(2020年7月21日「感染再拡大 最前線の現場で何が」)