世界の148団体が開発する新型コロナワクチンのうち、17種類が人への臨床研究を行う治験の段階に入り、競争が激化している。イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」社とオックスフォード大学が共同で開発しているワクチンは9月(2020年)ごろまでの実用化を目指していて、日本政府は国内供給に向け交渉に入っている。
日本でワクチンが実用化されるのは、いつ頃になるのだろうか。「アストラゼネカ」社では今年(2020年)から2021年にかけて10億回分の生産が可能になる見通しだというが、過度な期待はしない方がよい。オックスフォード大学の開発研究社は「現段階で成功する確率は50%しかない」と話しているからだ。
大阪が独自に進める「DNAワクチン」とは
また、国際政治に詳しい明治大学の海野素央教授によると、「アストラゼネカ」社のワクチンには優先順位がある。1番は自国イギリス(1億回分)と開発に10億ドル以上拠出しているアメリカ(3億回分)、次にワクチン同盟を組んでいるイタリア・ドイツ・フランス・オランダ(最大4億回分)で、その次は医療体制の整っていないアフリカ諸国やインドなどに供給する可能性が高い。日本に回ってくるのはその後だ。
大阪のバイオ製薬会社「アンジェス」が大阪大学などと開発を進める「DNAワクチン」はどうなのか。DNAワクチンは世界で成功した例がないというが...。
日本感染症学会専門医の佐藤昭裕医師は「DNAワクチンとは、ウイルスの一部のたんぱく質を使って抗体を作ろうというもの。弱毒化したウイルスそのものを打つこれまでのワクチンが料理そのものを体に提供するものだとしたら、DNAワクチンは材料だけ提供し、体の中で料理を作らせるというイメージです」と解説。
「これまでインフルエンザなどで試したけれど効果が弱く、使われなかった。ただ、DNAワクチンは開発までの時間が短く済むし、塩基配列が分かれば大量に作ることができる。この技術が安全で有効性が高いということが分かれば、ワクチン業界にとってはすごいことです」と佐藤医師は話す。
司会の加藤浩次「成功例がなくても、チャレンジする意味はあるということですね」
ロバート・キャンベル(東京大学名誉教授)「1950年代、勇み足でポリオのワクチンを摂取させたときには、7万人の子どもたちが病気になってしまい、医学史の中で大きな事件になった。慎重さと大胆さの折り合いが難しいです」