「美術館女子」と銘打って、地域に根ざす美術館を盛り上げようという読売新聞の企画が物議をかもしている。美術に興味のなかった人気女性アイドルグループのメンバーが、各地の美術館を訪れるというもので、美術作品などをバックにした写真を掲載しているのだが、ネットなどでは「女性蔑視」と批判の声が相次いでいる。
朝日新聞もおととい23日(2020年6月)、「名前も企画も...『美術館女子』に透ける意識」と問題視する記事を掲載した。
読売新聞オンラインに掲載されている写真は、美術館の建物や美術的価値の高い作品の前で、アイドルがポーズをとるという構図だ。これに対し、SNS上で「女子かどうかはほっといてほしい」「美術にかかわる女性にも鑑賞に訪れる女性客にも失礼」などと批判が起きた。
「とくダネ!」が男女200人にアンケート調査したところ、女性の6割以上と男性の5割弱が、「美術館女子」という言葉に「違和感がある」と回答した。国内外にアート情報を発信している「Tokyo Art Beat」の野路千晶編集長は、「ジェンダーに対する意識の低さ、蔑視的な表象、美術作品を"映え"という一元的な観点から見ているという3点が問題です」と指摘する。
深澤真紀さん「美術館女子っておじさんの視点」
「草食男子」や「肉食女子」という言葉を生み出したコラムニストの深澤真紀さんは、「美術館女子」について「おじさんの視点なんですよね。美術館にいる女子を鑑賞しているおじさんが名付けたのだろうなという気がします。男子・女子に何かを言い分けるのはもう古いかなと思います」と話す。
読売新聞グループと美術館連絡協議会は、「アート作品だけでなく、建物を含めた美術館の多様な楽しみ方を提示し、多くの方に美術館へ足を運ぶきっかけにしていただきたいと考えました。今後のことは改めて検討する方針です」と説明している。
古市憲寿(社会学者)「○○女子が全部ダメだとは思わないけど、今回は美術館に行く女の子は、作品には興味ないでしょという偏見が混じっている気がして、新聞社がやるには問題があったと思います」
中江有里(俳優)「美術館女子という名前ありき。このムーブメントを作り出した側の考えが、透けてみえることへの反発があるんじゃないかなと思います。もうその方法は古いなと思いますね」