新型コロナ禍によってNHK大河ドラマ「麒麟がくる」が中断しているため、NHKは21日(2020年6月)に「戦国大河ドラマ」の名場面集第2弾として「国盗り物語」を放送する。「国盗り物語」の主要人物は斎藤道三、織田信長、明智光秀、そして帰蝶......。まさに「麒麟がくる」の登場人物がそのままかぶるだけに、ネット上では「懐かしい!」「本能寺の変の真実はどう描かれているの?」と興奮の声があふれている。
田中角栄の野望と信長の天下取りを重ねてエネルギッシュに
「国盗り物語」は1973年(昭和48年)放送。司馬遼太郎の同名小説『国盗り物語』を核に、司馬作品の『新史太閤記』『功名が辻』『尻啖え孫市』などを合わせて大野靖子が脚色した。美濃一国を「盗る」ことに生涯を賭けた斎藤道三と、彼の後継者と目されてともに天下統一に邁進しながらも、最期には本能寺で激突する織田信長と明智光秀の生き様を描いた。
前半は、斎藤道三が主人公、後半は彼の天下取りの志の後継者である信長と光秀が主人公という構成だ。主な俳優陣がほぼ20代と、若くて生きがよかった。ドラマスタート時の年齢を調べると、平幹二朗(斎藤道三)は別格に、高橋英樹(信長・29歳)、近藤正臣(光秀・31歳)、火野正平(秀吉・24歳)、寺尾聰(家康・26歳)、松坂慶子(濃姫・21歳)とみんな非常に若い。
これを、「麒麟がくる」の染谷将太(信長・27歳)、長谷川博己(光秀・43歳)、佐々木蔵之介(秀吉・52歳)、風間俊介(家康・37歳)、川口春奈(帰蝶・25歳)と比べると、いかに若々しいかわかる。これは、当時のプロデューサーが放送前年に「今太閤」として颯爽と総理大臣に就任した田中角栄に織田信長の姿を投影して、そのあふれるエネルギーをドラマで表現したかったからだといわれる。
ちなみに、光秀が秀吉に敗れて土豪に討たれる最期のあと、いきなり新幹線が疾走、岐阜城や信長の墓、観光客が天守閣にいる大坂城を映し出し、時代の変化を表現する斬新な演出が話題になったものだ。これも「日本列島改造」の高度成長期が背景にあるのだろうか。
本能寺で信長を守って死んだ帰蝶のなきがらに光秀は...
本能寺の変に至る経緯は――。信長から異例の抜擢を受けて心酔していく光秀だが、一方で、叡山焼き討ちの信長の行動を「魔神」と批判、武田勝頼を滅ぼした直後の陣中で、信長から理不尽な暴行を受けたことと、旧領を召し上げられたことなどが信長への殺意の決定打となっていく。
また、光秀と帰蝶の関係は「麒麟がくる」と同様にいとこ同士の間柄。憎からず思っているという仲だ。本能寺の変では、帰蝶は「殿!お濃は残りますぞ!」といって敵兵相手に薙刀で戦うも背後から槍で突かれて絶命。その帰蝶の顔を光秀が複雑な表情で見つめる場面があった。「麒麟がくる」ではどう描かれるのだろうか。
ネット上では、47年前に「国盗り物語」を見た人々の期待の声が殺到している。
「国盗り物語は本当に、これぞ大河ドラマの中の大河といえる華のある作品でした。また、オープニングのメインテーマ曲が素晴らしく、早いテンポの勇ましい曲調から一転、のびやかな美しいメロディーに変わり、戦国時代の夢と野望、そして悲しみまで感じ取れる曲でした。今でも『国盗り』のメインテーマを流しながら、尾張や美濃の国をドライブするのが大好きです。高橋英樹さんの、はつらつとした力強い演技も魅力的でした。唯一残っている映像である総集編の最後、近藤さんの光秀が竹槍に刺され命を落とすシーンは、何度観ても涙が出ます。そしてバックには、編曲されたオープニング曲が。制作された時代である高度成長の、健康的な日本のダイナミズムを感じさせられる素晴らしいエンディングでした」
「当時は、なんじゃこりゃと思いましたが、光秀が絶命した瞬間に東海道新幹線の疾走シーンに切りかわるエンディングが忘れられませんね!」
高橋信長の「光秀ぇ~ッ!」「たわけ!」が流行語でしたね
「主人公が変わりながらドラマが進む早い展開だったのに、翌週が楽しみで、家族全員で観ていた。信長にいじめられて光秀にショックを受ける事があると、『ガーン』と衝撃音が鳴ったのが強烈な記憶。みんな生き生きとしていた。信長、光秀、家康、秀吉...自分の中では各武将のイメージがこのドラマで出来上がった。その後の戦国ドラマはどうしても比べてしまう」
「戦勝の宴で頭蓋骨の盃を拒む光秀を罵る信長が鬼気迫って怖かった!高橋英樹さんの信長といえば、『光秀ぇ~ッ!』と『たわけ!』ですね。当時の学校では流行語でした」
「ランドセルに司馬遼太郎さんの『国盗り物語』を入れて学校に通っていた歴女ですが、皆さんの意見に全く同感です。今でも私の中では道三は平幹二郎さん、信長は高橋英樹さん、濃姫は松坂慶子さん、秀吉は火野正平さん、光秀は近藤正臣さんが浮かび、その後誰が演じても比べてしまいます。濃姫の輿入れに光秀が付き添い、微妙な心情が一瞬あった様な場面が(自分の妄想だったかも?)心に残っています」
近藤正臣の光秀がよかったという人が多い。
「国盗り物語は子どもだったけれど、多感な頃だったので鮮明に覚えています。道三の野心と悲哀、信長の『家臣は道具』というセリフに代表される厳しさ、正義感が出過ぎて浮いてしまう光秀。おベンチャらの上手な秀吉。その中でも若手だった近藤さんの光秀は今でもすごいと思っています」
「大河ドラマを長く見ている者なら、誰にでもきっとその役はこの人!という自分のスタンダードがある。『国盗り』で光秀を演じた近藤さんは、その後に『黄金の日日』で石田三成も演じたが、知的でクールな武将が本当にハマる俳優さんだと思った。最近はすっかり好好爺の役柄が多くなったが、また曲者を演じるところを見てみたい」
「日本史上、明智光秀と石田三成は敵役的な存在であったが、大河ドラマで評価が変わったと思う。それぞれを演じた近藤正臣さんの功績が大きい。山崎の合戦と関ヶ原での最期は感動もの」
21歳で帰蝶を演じた松坂慶子さんが初々しくて、とてもキレイ
平幹二朗の斎藤道三の存在感に圧倒れされた人が多かった。「前半の平幹二朗さんの斎藤道三がとにかく良かったです。強さ、可愛さ、色気、男気、そして、怖さと哀れさまでそろっていて、それが高橋信長と近藤光秀に分かれて受け継がれ、最後、本能寺で激突する展開でした」
「平幹二朗道三のイメージは、狡猾で手段を選ばない無慈悲な野心家のイメージでした。とにかくモテそうな時には茶目っ気のある武将に映りました。凄味のある素晴らしい役者さんでした。平道三は、歴代大河の中で道三役ナンバーワンです」
最後にこんな声を。
「当時21歳で帰蝶を演じた松坂慶子さんが初々しくて、とてもキレイで、鮮烈でした。その後、色々なドラマで、名取裕子さん、菊池桃子さん、涼風真世さん、中谷美紀さん、菊川怜さん、和久井映見さん、観月ありささん、小雪さん、内田有紀さん、柴咲コウさん...と、多くの女優さんが帰蝶を演じたけれど、松坂慶子さんを超える人はいない気がします。川口春奈さん、頑張ってください」(テレビウォッチ編集部)