黒木瞳さんのことを、今週も書こうと思います。2019年10月、Bunkamuraシアターコクーンで上演された「オイディプス」を見に行き、黒木さんの演技と存在感に驚きました。この舞台は、古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが書いた、ギリシャ悲劇の最高傑作「オイディプス王」を翻案して、上演されたものでした。
「父を殺し、母を娶(めと)るであろう」という恐ろしい予言から逃れるため、放浪の旅に出た古代ギリシャ・コリントスの王子オイディプス(市川海老蔵)は、怪物スフィンクスを退治した英雄として請われ、テーバイの王となります。オイディプスは、先王ライアスの妃イオカステ(黒木瞳)を妻に迎え安寧な日々を送るのですが、残酷で悲劇的な運命が彼に襲いかかるのです。
妻のイオカステは実は母であり、父である先王ライアスを殺したのは息子である自分だったことに気づきます。黒木さんは、迫力と何とも言えない色気を漂わせながら、この難役を見事に演じていました。
舞台が終わった後の、楽屋でのご挨拶の時も、最後に一言「お綺麗でした」と申し上げました。
孤独な独身女性が黄昏期の恋に落ちたら
次に記憶に残るのは、2018年フジテレビで放送された「黄昏流星群」です。このドラマは、佐々木蔵之介演じる主人公が、中山美穂と夫婦でしたが、ある日理不尽な理由で取引先への出向を、突然命じられてしまいます。
傷を癒やすべく単身スイス旅行へ行った佐々木蔵之介が、偶然出会ったのが黒木瞳なのです。黒木さんが演じるのは、実母の介護を地道に続けている独り身の女性。孤独な彼女が人生の"黄昏期"に恋に落ち、新たな自分を見つけます。感性豊かで芯の強い女性を表現しました。
橋の上で一度分かれて、家路を急ごうとする黒木さんが、思い返して佐々木蔵之介の所へ走って戻るシーンが何とも言えず可愛く、印象的でした。まさに黄昏期の"純愛"を演じたのです。