イジメや集団暴行などの未成年者による犯罪は、たとえ殺人やレイプなど凶悪であっても、重い刑罰を免れ、程なく社会復帰してくる。だが、彼らの犯罪の犠牲になった被害者や遺族の苦しみは一生涯続く。そんな少年犯罪の被害者たちの葛藤を取り上げた、WOWOWと東海テレビが共同制作のドラマだ。原作は貫井徳郎の警察小説 「殺人症候群」。
谷原章介&木村多江の静かな大人の恋が哀しい
未成年者の集団に恋人を殺され、自らもレイプされた矢吹響子(木村多江)は、「自分は苦しみを忘れることができないのに、加害者の少年たちは1年足らずで少年院を出て、好きなように遊んでいる。彼らを殺してやりたい」と語る。それが復讐を「是」とする側の偽らざる心情だろう。
一方、ある主婦は同級生のリンチで中学生の子供を亡くしたにもかかわらず、「大事な人を殺されたら、相手を殺す権利が生じるんですか。殺したら、息子を殺した人殺しと同じになる」と踏み止まる。これが復讐を「非」とする側の論理だ。ドラマのテーマはこの是か非かだ。
主人公の警視庁北泉署の刑事・鏑木護(谷原章介)にも婚約者を少年らに殺された過去がある。響子は鏑木の大学の同級生で、響子に代わって犯人の少年たちを殺害した。実は、鏑木は少年犯罪の被害者の遺族から高額の報酬で依頼を受け、少年院を出ても反省していない加害少年たちを次々と殺す「職業殺人者」だった。
戸惑いながらも鏑木に思いを寄せる響子と、「血で手を汚した人間は人並みの幸せを望んではいけない」と突き放す鏑木が、思いを秘めて静かに言葉を交わす哀感あふれるシーンがいい。
週末の夜、大人のドラマにどっぷりと浸りたい人におすすめだ。(土曜よる11時40分放送) 寒山