「酒は涙か溜息か」のヒット作詞家・高梨一太郎(ノゾエ征爾)が持ち込んだ詞に古山裕一(窪田正孝)が曲を付けた「船頭可愛いや」は、まったく売れない。コロンブスレコードは、同じ日に発売された別の曲の宣伝に力を入れたのだ。裕一は契約解除の通知と、契約金返還を求められ追い詰められてしまった。
ため息をついている音(二階堂ふみ)を双浦環(柴咲コウ)が心配する。「主人の出した曲がまったく売れなくて...、いい曲なのに」「なんていう曲なの?」。音がレコードを聞かせると、環は良い曲だと気に入り、自分が歌いたいと言う。「私が歌って、もう一度レコードだすのよ」
「クラシックレーベルで歌謡曲を出すわけにいかん」
音は日本の代表的なオペラ歌手が歌うと言い出したことに驚き、自宅の隣の喫茶店「バンブー」に環を連れてくる。裕一に会わせるためだ。「双浦です。はじめまして。『船頭可愛や』は大変優れた曲です。この歌が評価されないなんて、日本の音楽が遅れていると感じました。私はいい音楽を広めたい。あなたの曲を大勢の人に届けたい。このままではもったいないわ。古山さん歌わせていただけませんか」
驚き、恐縮する裕一は「も、も、も、もちろんです。ありがとうございます」都いったきり言葉が続かない。
裕一がそのことをコロンブスレコードのディレクターの廿日市(古田新太)に伝えると、世界的歌手の環が歌ってくれるのであればと大乗り気だ。ところが、作曲家の大御所である小山田耕三(志村けん)は反対だった。世界的な歌手に歌謡曲を歌わせたくないという。本心は新進気鋭の作曲家、裕一に嫉妬していたのだ。環は小山田の自宅を訪ね直談判におよぶ。
(NHK総合あさ8時)