フジテレビは29日(2020年5月)、同局の恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラー木村花さん(享年22)が23日に急死したことについて、遠藤龍之介社長のコメントを発表した。
遠藤社長は「私どもがもっと細かく、継続的に、彼女の気持ちにより添うことができなかったのだろうかと、慚愧の念に堪えません」と述べたうえで、「リアリティーショー」という特殊な番組の性質をふまえ、「刻々変化する出演者の心の在り方という大変デリケートな問題を番組としてどう扱っていくか、どう救済していくかということについて向き合う私どもの認識が十分ではなかったと考えております」と反省の弁。
「フジ系バイキング、とくダネでは番組の責任は見事にスルーだ」
再発防止も含め、「今後、十分な検証を行ってまいります」と明かした。また最後に付け加える形で、
「ネット上では、出演者や関係者などへの中傷も相次いでいると聞いており、大変、憂慮しております。そういったご批判は番組を制作・放送・配信していた我々が受けるべきものと考えていることを申し添えます」
と語った。どうもネット上の中傷が今回の事件の一番の大本であると考えているようだ。
ネット上では、遠藤社長のコメントとフジテレビの姿勢について、怒りと疑問の声があがっている。
「今日の(フジテレビ系)バイキングは、坂上忍と土田晃之が視聴者のSNSに責任をぶつけるコメントをしていた。昨日の(フジテレビ系)とくダネも同じで、小倉智昭が誹謗中傷を書いた人間の責任にしていた。リアリティーショーの問題と批判に対して真摯に受け止めるどころか、放送した内容に踊らされた連中の民度の低さをあげつらって、全く番組の責任に触れていないのは、どういう了見ですか? 社長のコメントと、どちらが本音なのですかね?」
「バイキングでは、リアリティー番組だけど視聴者が真に受けすぎ、何があっても匿名でSNSでの誹謗中傷は許せない、匿名SNSに対して法整備が必要、と番組側には非がないどころか、視聴者と社会(政府)が悪いという内容だった。確かに花さんを死に追い込んだのはネットでの誹謗中傷で、絶対に許してはいけないが、ネットが荒れた要因を作ったテレビ制作者側に、そういう認識が一切ないのには驚きました」
「MCが煽り、予定通りに炎上させて視聴率を上げたのでは?」
「テレビ局が、計画的に殺したとまでは思わないが、計算通りに傷つけたのだろうなとは思う。言い換えれば『予定通りに炎上させた』『炎上は美味しい反応だと思っていた』『ヒールやっている子だから、これぐらい平気だろと放置した』のだ。今のプロレスは1980年代あたりまでと違って、ファンはみんな『お約束』を知っている優しい世界になっている。ヒール=悪役であって悪人ではない、台本のあるショーだと理解している。でも、テラハは台本なしをウリにしているから、視聴者の中にはまともに信じる人間いる。彼女がプロレスのために、プロレスと同じように考えてヒールを演っていたとしたら、ネットから受けた攻撃は全く予想の範疇外のひどさだったはずだ。対応を出演者に丸投げした番組側の責任は極めて重い」
「同感だ。他局では『スッキリ』がテラスハウスの元出演者たちを取材し、番組が出演者をキャラ立ちさせて、視聴者をあおるから、恐怖感を感じながらでていたと証言していたよ」
「それを考えると、誹謗中傷コメントも、俗に言うバズで、番組側にとっては想定していた、または期待していた、むしろそうせしめた、わけだ。だって視聴率が上がっていたのだから、それを静観し、少なくともあえて対応せずにそのままバズらせたわけであり、フジテレビの責任は重い」
番組のシステムに疑問を持つ人も非常に多い。
「社長コメントは、『出演者や関係者などへの中傷も相次いでいる』と言っているけど、根本的に木村花さんへの中傷と、番組MCたちへの意見は違うのですよ。木村花さんへの中傷はもちろん問題外に許されないが、番組関係者へのネットの意見は(台本があるかどうかは別として)、番組の顔として炎上を煽り続けたMCに対しての抗議なのです」
「そのとおりだ。素人・半素人のセンセーショナルな行動を抜粋して編集、それをMCが辛辣に批判し、ネットでの炎上を期待して視聴率につなげる手法は、倫理的にどうなのかと感じます。ネットで直接的な誹謗中傷は言語道断ですが、それを煽る番組を制作、放送したことに対する意見はいけないのですか? そしてそのような番組を制作・放送した局のトップがこのような他人事のようなコメント。どうにかして批判から逃げ回り、テレビ局ではなくネットが悪い、と印象操作をしたいようにしか思えません。しっかりした第三者による検証を望みます」(テレビウォッチ編集部)