"黒川定年延長法案"一夜でつぶした週刊文春「賭け麻雀」スクープ!卓囲んでた産経新聞記者の関係者たれ込み

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   安倍首相が何としても通すと意地を張り、ツイッターをはじめとする多くの世論の反発も無視して、強行採決寸前までもっていった「検察庁法改正案」を断念したのは5月18日(2020年)であった。小心な安倍は弱みを見せることが大嫌いな男だ。その安倍がなぜ土壇場で、世論に屈したかのように翻意したのか。その理由が、きょう21日発売の週刊文春(5月28日号)を読んでわかった。

   "安倍政権の守護神"といわれ、安倍が法を捻じ曲げてでも検事総長に据えたかった黒川弘務・東京高検検事長(63)が、コロナ自粛の最中の5月1日に、産経新聞と朝日新聞の記者たちと「賭け麻雀」をしていたと報じたのである。その件について、週刊文春が黒川を直撃したのが5月17日(日曜日)だった。無言を貫いた黒川から官邸に報告が上がったのは、その直後だったはずだ。安倍と黒川と親しいといわれる菅が話し合い、改正案を今国会で無理矢理成立させれば安倍内閣は持たない、そう判断したのであろう。一連のコロナ報道ではやや精彩を欠く週刊文春だが、さすが文春砲は威力満点である。

   黒川は以前から超がつくほどの麻雀とカジノ好きで知られていた。週刊文春によれば、「今度の金曜日に、いつもの面子で黒川氏が賭け麻雀をする」という情報が、4月下旬に「産経新聞関係者」からもたらされたという。その人間はこうもいったそうだ。<「産経の社会部に、元検察担当で黒川氏と近く、現在は裁判担当のAという記者がいます。彼が一人で暮らすマンションが集合場所です」>

   隅田川のほとりにあるマンションの5階がA名義の部屋。そこに夜7時半、黒いスーツにノーネクタイ、マスク姿の黒川が<あたりを軽く警戒しながら、慣れた足どりでエントランスへ入り、オートロックを通って上階へと昇っていく>(週刊文春)

   それから約6時間半後の午前2時ごろ、玄関に黒川と2人の男が現れた。待機していたハイヤーに黒川と1人の男が乗り込む。週刊文春が追跡する。目黒区内の黒川の自宅前で黒川が降り、もう一人はハイヤーで走り去った。いったん自宅へ入った黒川は、ゴミ袋を抱えて出てきて、また家に入っていった。時刻は午前2時20分になろうとしていた。

   週刊文春は、7~8年前に黒川をよく乗せていた元ハイヤー運転手にも話を聞いている。彼によると、記者と一緒に乗り込み、記者があの手この手でネタを取ろうとするが、黒川はのらりくらりとして、なかなか肝心なことはしゃべらなかったそうだが、「この間、韓国に行って女を買ったんだけど」という話はしていたという。黒川を送ると記者が「ある程度負けてあげないといけないんだ」とぼやき、「きょうは10万円もやられた」ともいっていたそうだ。

   賭け麻雀に接待ハイヤー。この男は検察官がつけるバッジ「秋霜烈日」の意味が理解できなかったのであろう。東京大法学部を出て1983年に検事任官。東京地検特捜部に配属され、その後、法務省に異動し、官房長、事務次官になり、第2次安倍政権から約6年間、安倍官邸から重用される。

   その間、小渕優子経済産業相の政治資金規正法違反事件は元秘書だけの立件で終わり、甘利明経済再生担当相の口利き疑惑では、現金授受を本人も認めたにもかかわらず、関係者全員を不起訴。18年に森友事件が起きるが、関係者全員を不起訴にするなど、ソフトな物腰とは裏腹に、権力側の走狗として働き続けてきたのである。

   それが権力者に「ういやつ」だと気に入られ、安倍たちは"違法"に定年延長してまで、黒川を検事総長に据え、自分たちを守らせようと企んだのだ。悪事が露見することを恐れるあまり、黒川という人間の本性を見抜くことができなかったのである。

朝日新聞、産経新聞の記者は説明責任はたせ!国民から批判の的と賭け麻雀は取材といえない

   きょう21日、黒川は法務省の聞き取り調査に対して、賭けマージャンをしたことを認め、辞任すると表明した。当然だが、黒川の辞任だけで終わらせてはいけない。朝日新聞DIGITAL(5月21日 10時45分)は、<退任が決まっても『政治と検察』をめぐる問題は一件落着とは言えない。黒川氏の定年延長の法的根拠の疑問は残ったまま。今国会での成立を見送った検察庁法改正案への懸念も消えず、政府が説明責任を尽くさなければならない状況は変わらない>と報じているが、私は、黒川と賭け麻雀をやった産経新聞と朝日新聞の記者たちも、説明責任を果たさなくてはならないはずだと考える。

   産経のA記者とは別の記者は司法担当が長く、今年初めまで司法クラブのキャップを務めていて、2009年には産経新聞司法クラブ名義で『検察vs.小沢一郎』という本を出している。いま一人の朝日新聞の人間は、元検察担当記者で、特別報道部のデスクを務め、現在は経営企画室にいるという。

   週刊文春の取材に産経の元司法クラブキャップは、会社を通せば、私たちも報道機関だから聞かれたことにはちゃんと答えるといいながら、広報部は「お答えしません」と、報道機関とは思えない応対。朝日新聞は21日朝刊の第二社会面で、「本社社員も参加 おわびします」と書いている。金銭を賭けていたかどうか調査し、適切に処理するとはいうが、「勤務時間外の社員の個人的行動ではありますが」と逃げの姿勢が見え見えである。

   読売新聞の渡辺恒雄主筆が自慢そうにいうように、相手の懐深く入らなければ大きなネタは取れないというのは、私にも少しは理解できるが、取材対象となれ合い、国民が自粛を強いられているなか、国民の大多数が「おかしい」と批判している法案に深く関わる人間と賭け麻雀するのは、時間外であろうと、報道に携わる人間に許されるはずはない。

   黒川と長年の付き合いがあろうとも、正義が安倍や黒川にないことが誰にも明らかないま、黒川との縁をぶった切ってでも、国民の知る権利にこたえる義務も責任も、彼らにはあったはずだ。取材者というのは、取材相手にのめりこみすぎてはいけない。それが鉄則だ。その人間と本当に親しくなりたかったら、仕事を辞めて、つきあえばいい。

   週刊文春の記事を読んで、黒川という男が権力とギャンブル好きの凡庸な男だということはよく分かった。それよりも項垂れたのは、新聞社という組織と、そこにいる人間たちが、ジャーナリズムが果たさなければいけない役割を忘れ去り、国民の知る権利など顧みることなどないという無残な現実であった。

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