「黒川弘務検事総長」に安倍首相が期待する2つの汚職つぶし「森友再捜査」「河井夫婦逮捕」

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   以前にも書いたが、「アベノウイルス」は感染力が強い。自粛していても3密にならなくても、安倍首相と話をしただけでうつる。感染したら最後、思考力が破壊されていく。そうとでも考えなければ、コロナ感染拡大で、日本社会が崩壊するかもしれないというときに、「幹部ポストを退く『役職定年』の年齢を過ぎても政府の判断で検察幹部にとどまれるようにする検察庁法改正案」(朝日新聞5月12日付)を強行採決しようなどという"愚行"を理解できはしない。

   今年1月(2020年)、定年退職するはずだった黒川弘務東京高検検事長の定年延長を閣議決定し、この7月に勇退するはずの稲田伸夫検事総長の後釜に据えようと安倍官邸は目論んでいる。

   週刊文春で、相澤冬樹が、黒川と赤木俊夫夫婦には深い因縁があると追及している。黒川が検事長になる前は法務省の事務次官だったが、その時の最重要案件が「森友事件」であった。告発を受けて大阪地検特捜部が捜査を進めていた。特捜部は起訴へ向けてやる気があると、NHK大阪報道部の記者だった相澤は感じていた。

   ところが、東京からは「不起訴」だという情報が流れてくる。出所は黒川がいる法務省からだった。そして赤木が自殺してから2か月後に、佐川宣寿元理財局長を含めた関係者38人全員が不起訴となるのである。黒川が「官邸の守護神」といわれる所以だ。

   安倍首相は何が何でも黒川を検事総長にしないと、自分の身が危うい。そこで、コロナのどさくさで、公務員の定年延長という大義名分の中に、「内閣が認めた場合の役職延長」という一項を入れ込んで、成立させようと焦っているのである。

   堀田力元東京地検特捜部検事は朝日新聞(5月14日付)で、不当な定年延長を受け入れた黒川も、それを認めた稲田も、「検察への国民の信頼を損なった責任がある」から、自ら辞職せよと迫っている。検察内部にも、安倍官邸に対するものすごい反発があることが、次の報道で見て取れる。

   東京新聞(5月13日付)は、「検察当局が、案里氏の夫の克行前法相(57)=自民、衆院広島3区=が票の取りまとめを依頼する趣旨で地元議員らに現金を渡した疑いがあるとして、克行氏を公選法違反(買収)容疑で立件する方針を固めた」と報じた。

   参院選前、1億5000万円という巨額な資金が安倍の指示で河井案里側に振り込まれていた。そのカネが票を買うために使われたのである。もし、国会会期中に現職議員が逮捕されることにでもなれば、安倍辞任は必至である。そうなれば、ようやく「アベノウイルス」の感染拡大も止まり、少しはましな政治を取り戻せるかもしれない。

「テレワーク・デモ」やろうよ!毎晩8時に胸にプラカード下げて全世界に発信

   ところで、今週の週刊誌を読み比べていて、週刊現代、週刊ポスト(合併号)と、週刊文春、週刊新潮に論調の違いが出てきたと感じた。週刊現代は少し前から、コロナ感染禍の中で、高齢者の命を見捨てる「命の選択」が世界中で行われていると報じてきた。読者の多くが高齢者だから、彼らに寄り添う雑誌作りはよくわかる。

   今週の週刊ポストも「若者にコロナ治療譲ります」というカードにあなたは署名できるかと、高齢者を意識した特集を組んでいる。週刊文春、週刊新潮は、安倍、小池、このところ株が急上昇の吉村府知事など、エライさん批判をずらり並べているが、私には、週刊現代の高齢者と弱者に寄り添う姿勢の方が、私も高齢者だからしっくりくる。

   その週刊現代からいくつか紹介してみよう。テレワークという言葉だけは人口に膾炙したようだが、週刊現代は、自宅でテレワークできない、宅急便や清掃員たちのような人たちの仕事を、どう考えているのか、その人たちを「非国民」のようないい方をする人間がいるが、彼らを軽んじていないかと鋭く迫る。

   タクシーの運転手もそうだ。出前をしてくれる人たち。そのような日常を守ってくれる人たちがいるから、家でテレワークと称してヌクヌクとしていられることを考えるべきだというのは、もっともである。最近は「自粛警察」などという言葉もある。自粛しない店などに嫌がらせの殴り書きなどをして、裏でせせら笑っている度し難い馬鹿どものことである。

   ところで、オンライン飲み会というのがあるのだから、オンライン・デモというのもあっていいのではないか。みんなが「検察庁法改正絶対反対」などと書いたプラカードを胸に掲げて、毎晩、夜の8時にネット上でデモをやる。安倍ちゃんの好きなニコ動が、それを世界中に発信する。私はこう書くな。「安倍は間違いなく日本一のバカ者である」

コロナ優先で後回しにされるがん患者手術...死亡リスク高いのに

   日本に感染者がどれくらいいるのかという野党の質問に、専門家ももちろん、閣僚たち、安倍首相もいまだに答えられない。お粗末すぎるが、週刊現代はいいところを突いている。感染者数の500倍以上になる760万人超がすでに新型コロナウイルス肺炎に感染しているという試算があるというのだ。

   この数字が意味するところはと、上昌広医療ガバナンス研究所理事長がいっている。「実は多くの日本人は新型コロナに一度感染して、すでに回復しているのです。新型コロナは緊急事態宣言をずるずると延長するほど恐ろしい病気ではないことが分かってきています」

   4月21日、慶応大学病院が調査結果を発表した。来院した患者67人にPCR検査を実施したところ、このうちの6%、4人が陽性と判明したのだ。これではサンプル数が少なすぎるが、ナビタスクリニック理事長の久住英二が20代から80代の男女2020人を対象に抗体検査を行った。調査の結果、新型コロナウイルス肺炎に抗体がある人は5.9%で、慶応とほぼ同じである。この人たちは発熱や咳に苦しんだわけではない。感染しても、知らずに軽症で済んでいるのだ。

   同じ週刊現代が、コロナ患者を優先するためがん患者が後回しにされていると報じている。もちろん、不要不急、急いで手術しないでも大丈夫な患者だが、がんの中には、足が早く、置いておけば助かる者も助からないと北里大学医学部の比企直樹主任教授はいう。

   「一番は膵臓ですよね。それから僕らが扱う胃、食道。これらは放置しておくと悪くなってしまうので、できる限り早い治療が必要です。(中略)極端な見方をすると、本来なら20%だった死亡率が、時間を置くことで30~40%くらいまで上がることになる。ですから延長するとしても、できるだけ早い治療の再開が必要となります」

   国立がん研究センターのデータによれば、生涯にがんで死亡する確率は、男で24%、女で15%。毎年、およそ100万人ががんに罹患し、約37万人が亡くなっている。今のところ、新型コロナウイルス肺炎の感染者は約1万6000人で、死亡者数は約700人である。

若者に「集中治療を譲る意志カード」年寄りの命は価値が低いのか...一歩間違えると非常に危険だ

   週刊ポストは、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授で現役の医師でもある石蔵文信(64)の発言を取り上げている。石蔵が高齢者向けに作成した「集中治療を譲る意志カード(譲カード)」が話題である。そこにはこう記されている。「新型コロナウイルス感染症で人工呼吸器や人工肺などの高度治療を受けている時に機器が不足した場合には、私は若い人に高度医療を譲ります」

   石蔵はこう話す。ICUやエクモが足りない日本で、さらにコロナの重症者が増えると、現場の医療従事者は「命の選択」を迫られるかも知れない。「激務の医療従事者に重い精神的負担を強いるのは酷なので」、譲カードを作成したというのだ。石蔵は私より10歳も下である。偉い人だとは思うが、私は譲る気にはならない。命の価値は平等であるはずだ。年寄りだから手当てをしないでいいという考えは、一つ間違うと非常に危険だ。

   こういうことを年寄りにいわせる前に、政治家が、木っ端役人どもが、医療崩壊にならないように手を尽くすのが、あんたらのやるべき仕事であるはずだ。医療崩壊が心配だと繰り返す暇があったら、医療従事者たちにマスクや防護服を優先的に配れ、新国立競技場の中に集中治療室付きの新しい病院をつくれ。中国だったら、1週間でつくるぞ。今は医療崩壊ではなく、政治崩壊というべきである。

マスク2枚と小銭で国民に我慢強いる政治家と役人どもの無為無策――これから2年間はタダ働きさせろ

   今のメディアを見ていると、戦時中もかくやと思わんばかりの「標語」が飛び交っている。「欲しがりません勝つまでは」「大本営発表」「村八分」「自粛警察」「非国民」などなどである。この国の政治家のたちが悪いのは、週刊現代で作家の西村健がいっているように、「営業自粛も『命令』ではなく『要請』です。フランスなど欧米では、外出禁止の命令を出す代わりに企業に対する補償をしています。それが日本では国が補償する義務のない要請という『お願い』にとどめ、カネを出し渋っているのです」

   ようやく出したと思えば、サイズの小さい不出来のマスク2枚と、わずかな小銭である。この際、公務員や政治家から給料を取り上げ、2年間ただ働きさせたらいい。それぐらいしないと、この国の政治家や役人は目が覚めない。

   都内で焼き肉店を営む男性がいうように、何とか潰れないようにしていくしかないのだ。野口悠紀雄にいわせれば、IMFの見通しでは、新型コロナウイルス肺炎は今年中には終息せず、来年は第2波が来ると予測しているという。そうなると「2024年まで5年間マイナス成長が続く」(野口)そうだ。

   政府の中には、「自粛で潰れる企業は淘汰されればいい」という者がいるという。5月1日から開始された持続化給付制度も、それまでに倒産してしまった事業主は対象外。それは「自己責任」なのだ。そもそも国の基本姿勢は「給付」ではなく、あくまでも「融資」だ。無担保などと甘い言葉を並べるが、結局は返済しなければならない。

   家賃に下水道、ガス代。自粛中でも出前を取れば、店で食うより高くつく。国民にこれだけの不自由さを強いて、終われば、「ごくろうさま」で済まそうというのである。

こんな悲しい時は悲しい歌を歌おう...私は中曽根美樹の「川は流れる」

   コロナ騒ぎで嫌というほど味わっている、この国の国民に対する冷たさ、無理解、弱者に寄り添わないやり方は、コロナ以後の日本人の生き方を変えるに違いない。新しい生き方。それは、できる限り政治を排し、役人を本来の公僕の地位に引き戻し、一人一人の国民が自立して、自分たちの幸福を追求できるものでなくてはならないはずだ。

   五木寛之が週刊新潮の連載で、悲しいときには悲しい歌をうたうと元気が出ると書いている。引き揚げを待っていた外地で発疹チフスがはやった時、五木たちの気持ちを支えてくれたのが『湖畔の宿』や『サーカスの唄』だったそうだ。

   いま、坂本九の『上を向いて歩こう』がしきりにうたわれているそうだが、安手の希望や励ましの言葉は歌詞にはないが、この歌も悲しい歌ではあるまいか。

   私が悲しいときにうたうのは仲宗根美樹の『川は流れる』である。「ささやかな望み敗れて 哀しみに染まる瞳に」、たそがれの水がまぶしいのである。吉永小百合主演の映画『愛と死を見つめて』の中で、小百合と浜田光夫がデュエットしていたな。幸薄かったミコと私の青春が甦ってきて悲しい。(文中敬称略) 

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)、『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)、『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、 『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)、『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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